SEVENTEENの紅一点 3 (ページ36)

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あるサイン会の話ページ36

Seungkwan side

ヌナ、大丈夫かなあ。

楽屋に戻ってきたはいいけど、その背中はいつにも増して小さく見える。小さくて、痛々しくて、自分を責めているんじゃないかと思わせる。

久しぶりのことだった。

『わたしの後ろの人、ちょっと変だよ。気をつけて』

たしかこのヌナはボノニのファンの方だったから、早めに次に行けるようにしてあげよう。
サインを書こうとペンのキャップを取ると、ボノニペンのヌナはこっそりそう教えてくれた。

チラッとだけそのヌナの隣の人…ギリギリまでドギョミヒョンのところで粘っている人のことを見る。
スタッフさんに促されて渋々僕の隣にいたAヌナの前に移動した。今日のサイン会の並び順は年齢順だった。

サインを書きながら、少しだけ隣の会話が聞こえてきた。

『はじめましてですか？』
『そう。今日初めてきたんです、サイン会』
『会えて嬉しいです、来てくれてありがとうございます』

ドギョミヒョンから回ってきたアルバムをめくって自分のページを探し当てたヌナの手元から、そのアルバムはサッと抜き取られた。
ヌナの目の前の、caratとしてこの場に来ているはずの人によって。

ドキッとした。

でも僕もサインしてる最中だし、目の前にはペンの方がいるし、手出しすることはできない。そもそも2人の話の内容だってちゃんと聞こえるわけじゃないし。

でも、何かがおかしいことくらいは僕もわかった。
忙しなく動いているスタッフさんたちは生憎気づいていない。

『私、あなたのサインは欲しくない。要らないの』
『…そうでしたか。応援してもらえるように、』

その次に続けようとしていた言葉は多分、頑張りますねとか、もっと一生懸命やりますねとか、そんな感じだと思う。
でもそれさえも遮られてしまったらしい。

『いいえ、頑張らないでください。かわいそうじゃないですか、ほかの13人が。あなたのせいで映像見れないこともあるんですよ私。同じような人は他にもいるんじゃないかなあ。うんざりなんです。あなたが写ってるの見るの。どんなに見ないようにしても、無理なんですよ』

だから居なくなってくれませんか、セブチから。

ヌナのことを無視する人も、強く言葉を浴びせる人もいるけど、こうやって面と向かって冷静に言われるのが1番堪えるのだと。
そうヌナが言っていたのはいつだっただろう。