SEVENTEENの紅一点 3 (ページ35)

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「これね、練習生になる前に弟から…お母さんのケータイ使って送られてきた写真なんだけど」
「随分前だね」
「そう、最初はなにが写ってるかわかんなかったんだけど。これボアさんなの」
「SMエンタの？」
「そう。これと一緒に、韓国の人がテレビに出てたよってメッセージ付きで。その頃はお父さんとお兄ちゃんと一緒にこっちで暮らしてて、日本には全然帰れてなかったから、いつか弟がわたしのこと忘れちゃうんじゃないかって怖かったの」

ヌナと弟はいくつ違ったっけ。5歳か6歳か、多分そのくらいだと思うけど。
頭の中でいろいろ計算してみても結局よくわからないのでやめておこう。

「だからこうやってわたしも有名になったら、日本のテレビに出れるかもしれないな～、日本でもデビューできるかもしれないな～と思って。日本で私が有名になったら、弟だってわたしのこと忘れないでしょ」
「たしかにね」
「ボアさんの事務所のオーディション受けてみようとチラシ見てたら、プレディスの人に声かけられて、まあそんな感じ」

まあそんな感じ、で片付けられたこの話は多分今まで一度も聞いたことがなくて、結構なインパクトだった。

ヌナは目立ちたがりやなタイプじゃないし、スカウトで入ったってことは聞いていたけど、それが無かったとしても自分から有名人に、芸能人になろうと思っていたとは知らなかった。

そのときのうちのスカウトの人に感謝しておこう。ヌナをこっちに連れてきてくれてありがとう。

なんだか朝ごはんのお供がとんでもなく大きいモノになってしまった。

ということはきっと、最近ヌナの機嫌がよさそうに見えるのは俺の気のせいじゃないんだ。

「じゃあヌナ、今最高に嬉しいでしょ」
「わかる？」
「うん」
「また一個夢が叶っちゃった」

だから早く作業室に行かなきゃ。

そう言ってパンの最後の一口を放り込んで、ヌナは嬉しそうに笑った。日本語訳の作業に追われて篭っている割に、ヌナがすこぶるご機嫌なのは見ていて楽しい。

「5月が待ち遠しいね」
「うん、とっても」

海の向こうのあの国でのデビューは、きっとうまく行く。
なんとなくそんな気がする。これはただの勘だけど、でも当たる。絶対。