SEVENTEENの紅一点 3 (ページ34)

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「ヌナはさ、韓国人が良かったとか、日本人が良かったとか、そういうこと思ったことある？」

きっとヌナは思ってないだろう、と心のどこかで思いながら尋ねてみると、ヌナはコーヒーを一口飲んでからちょっと笑った。

「ハンソリはわたしがそうやって考えると思うの？」
「いや、全然」
「そうでしょ、全く思ってない。お父さんとお母さんがいて、今のわたしがあるから。今の自分に満足してるからもう、それだけで充分なんだよ。ハンソリもそうでしょう」
「うん」

そう、あの『たとえば』の話がなにも意味を持たないのは俺自身がよく知っていた。
ハーフというものはまあまあ厄介なことなのかもしれないけど、自分の大切な構成要素であって、それがあるから今の自分がいるのだ。

「日本に生まれた自分も、韓国に来る決断をした自分も、アイドルになろうと思った自分も、今こうしてアイドルの仕事をしてる自分も、全部大事なの」
「一個一個全部自分で決めてきたことだから尚更だ」
「そう。それがなきゃ今ここでわたしは賞味期限すれすれのパンをハンソリと一緒に食べることも出来なかった」
「すれすれだったんだね」
「あ、口が滑った」

瀕死、というのは本当だったらしい。腹に収まってしまったパンの心配をしてみる。
死ぬ前に俺の腹にしまわれてよかったよな。うん。

「そもそもヌナはどうしてアイドルになろうと思ったの？」

練習生の時、こういう話をしたことはあったけど、ヌナはあまり話すタイプじゃなかったから。聞いたことがあったような、無かったような、どうだったっけ。

「わたしね、有名になりたかったの」
「ヌナが？」
「そう、わたしっぽくないよね」
「ぽいかぽくないかで聞かれたら、そうかもしれない」
「わたしもそう思う。だから昔は大っぴらにはいえなかったんだ」

これ見て、と渡されたスマホに写っていたのは1枚の写真。テレビの画面を撮影したみたいな。画面は粗くてちょっとブレてて、イマイチなにが写っているかはわからない。