SEVENTEENの紅一点 3 (ページ33)

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バーノンと朝ごはんの話ページ33

Vernon side

たとえばの話をしよう。

もし目の前でジャムの瓶を開けようと苦戦しているヌナが、韓国人だったら。
韓国人のお父さんと日本人のお母さんから生まれなかったら。純粋な日本人だったら。

果たしてヌナはそれでもここにいたんだろうか。

かれこれ数分は格闘しているその蓋はびくともしないらしく、プルプルと手を震わせているのがだんだんかわいそうになってきた。貸して、といって蓋を開ける。

「わたしがやってもビクともしなかったのに」
「ヌナの力が篭ってたから今開いたんだよ」
「そういうことにしておこう」

スプーンですくったジャムをパンの上に落としてから、ヌナに渡した。

朝珍しく早起きしてスマホをかまっていたら、パンが瀕死だから来て欲しいとカトクが来た。よく意味はわからなかったかったものの、良い朝を過ごせているからよしとする。

時刻は朝7時53分。
昼過ぎから撮影はあるけど、練習は夜だし、午前中は暇だ。

ヌナはご飯を食べたら作業室に行くらしい。全く、忙しいことこの上ない。

冒頭に戻って、たとえばの話のつづきだけど。

目の前のヌナは、普通に外見だけなら韓国人に見える。
半分の血と、メイクのせいだろうか。

そのそもの顔立ちもあると思うけど、でも韓国人であるお父さんに似ているかと言われると、そうでもない気がする。お母さんはどんな顔だっけ。

「なあに、わたしの顔、何かついてる？」

パンにかじりつきながらヌナがそういった。

「ヌナって、お父さんに似てる？お母さんに似てる？」
「うーん、そうだなあ…どっちかっていうとお母さんかな、自分じゃわからないけど。それがどうかしたの？」
「いや。ちょっと考えてたんだ。ヌナは韓国人っぽい顔立ちだなと思って」
「まあ確かに、あんまり日本人だって思われることはないかなあ」
「俺は逆だけどね」
「不思議だよね、おんなじ量の血が入ってるはずなのに」

ヌナは日韓ハーフで日本人だけど、韓国人だと思われて。俺は米韓ハーフで韓国人だけど、アメリカ人だと思われて。

そのせいで嫌な思いをした回数なんてもう、数えきれないくらいだし、なんで、と思わなかったわけじゃない。

でも俺はこの顔が気に入ってるし、生まれ変わりたいとも思わない。

外見だけで人間性が決められてしまうのが嫌なだけ。皮を剥いだら同じ人間で、この世界にいる人みんなそれは変わらない。