SEVENTEENの紅一点 3 (ページ30)

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「すごいよね、ガールズグループの子たちはこれを毎回履いてステージに立ってるんだよ」
「Aだって履いて踊るじゃん」
「そうだけど、でも今回やったからもう当分やらなくていいかなあ…」
「いつまで履くの？」
「とりあえず12月中はずっとこれ」

Aはどこか遠くを見るようにそう呟いた。

聞けばスミチャの活動の時だけ履くらしいから、ほかの2曲は普通の靴を履けるということだ。

年末までの辛抱、と思いつつも年明けにもいくつか予定があった気がしてならない。
活動が完全に終わるまではこのカツカツ音とはお友達をしなきゃいけないらしい。

あとで何食べようかなあ、とケータリングを物色している彼女を呼ぶ。

「A、監督さん呼んでるよ」
「あ、ほんとだ行かなきゃ」
「頑張ってきて～」
「ん、」

手を振って向こうに行こうとしたAの口から、ミンギュがいてよかった、と聞こえたのは気のせいだろうか。気になってしまって彼女の手を取る。

「どういうこと」
「ええ…聞かないでよ」
「気になるじゃん」

俺が手を離さないでいると、遠くにいる監督から声がかかる。
そろそろ行かないとダメかな、と思って手を離そうとすると、彼女は小さくため息をついた。

「ヒールでいつもより高くなっちゃったでしょ、背が。それでもミンギュはわたしより大きいから、ミンギュと一緒にいればあんまり目立たないし、楽だから…」
「たまたま俺がいたからこっちに来たわけじゃなくて、俺のことを探してわざわざ来たってこと？」
「…そうだけど、なんでそんなに嬉しそうにするの」
「んー？そう見える？」

こんなことを言いながら、自分がニヤついてしまっているのはよくわかっている。

彼女が『自分の意思で』『俺の隣を』選んだことが大事。

眠かった目が一気に覚めた気がする。
行くからね、と手を離した彼女にファイティーーーン！！と声をかけた。

こんなことならいつもヒールにしてほしい。あ、でも痛そうだったし、当分いいやって言っていたな。じゃあ無しの方がいいのか。
心の底から、いや心の8分目くらいから彼女が今後ヒールを履かずにいられますようにと祈っておこう。

こんな願いも虚しく、来年の夏にはまた地獄がやってくることを彼女も俺もまだ知らない。