SEVENTEENの紅一点 3 (ページ43)

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「俺はそれを楽しみにしてるのに」
「悪魔かお前」
「ジョンハニヒョン、最初から起こす気ゼロだったよ。ジャケットまでかけてさ」

彼女の肩にかけられているジャケットはジョンハニのものらしい。ずり落ちている左肩をそっと元に戻してみる。やはり反応なし。
揺するか、よほど大きい音を立てない限りは起きないだろう。

「よっぽど疲れてたんだねA」
「めちゃくちゃ張り切ってたもんな」
「配信もするって言ってたし」
「あーあ、俺も歌いたかったのに」

メインボーカルいないんだよ！？とドギョミに言われて、ああそうだったと思い出す。

OSTと普通の楽曲だと、やはり使いたい声も違うらしい。なるべく耳に馴染みやすく、ドラマを邪魔せず、柔らかい声が必要なのだと。
ソクミニとスングァニは無しね、と真っ先に切り落とされていたのは結構かわいそうだった。

『2人が入ったら上手すぎちゃう。そうしたらドラマじゃなくて曲のほうに集中しちゃうでしょ。今回のボーカルはシュアオッパとジフニオッパとスニョンイオッパが適任』

2人の声はとっておきだから、まだ出さないでおかせて。

そう笑顔で切り捨てられた2人は、喜んでいいのか悲しんでいいのか、複雑そうな表情で肩を叩き合っていた。
ヒョン僕たちもっと頑張らないと、そうだねスングァニ、とでも言いたげな後ろ姿を見て、俺もメンバーに入れろと直談判に行くのを泣く泣くやめたのだ。

「ヒョン、そういえば何しに行ってたの？」
「あっやべ」

そうだ。俺は衣装さんに言伝を頼まれていたんだ。
しかもその言伝相手は目の前で死んだように眠る彼女である。
用意した衣装に手違いがあって、スタッフが慌てて借りてきたものが合うか確認してほしいと頼まれていたんだ。流石に起こさないとまずい。

そう思った瞬間。

「Aいる！？衣装さん呼んでるけど！！スンチョリヒョンは！？」

バンと勢いよく開いた扉とそれと匹敵するくらいデカい声でミンギュが入ってきたことで、屍と化していたAは盛大に肩を揺らした。

それからゆっくりと起き上がって、

「なに…うるさいミンギュ……ん…？オッパたち、なんでそんなに笑ってるの…？」

すまん。あまりにも期待通りだったから、と心の中で呟く。
ジョンハニの願い通り、彼女の額と枕になっていた腕には、同じように大きく真っ赤な跡ができていた。