. ページ29
「喉渇いちゃって起きてきたら明かりが漏れてたから誰かと思ったら…」
「ごめん、もう寝るよ。Aもおやすみ」
「待って」
今は何となく目を合わせられなくて、早くこの場を立ち去りたかったのに、それは彼女によって止められた。俺の手は冷たかったらしい。掴まれた彼女の掌からじんわりと熱がうつる。
「……オッパ、お願いがあるんだけど」
「なに？」
「今日だけ、わたしと一緒に寝てくれない？」
別にやましいことがあるわけじゃないし、練習生時代はしょっちゅう雑魚寝したり、年下の子たちを呼んで一緒に寝ていたりはしたけど、ちょっと罪悪感があるのは何なんだろうか。
「俺汗臭いと思うんだけど」
「そんなこと気にしないし」
手を引かれるままAの部屋に入って一緒のベッドに入った。今日はどうもベッドがあったかくならなくてさあ、オッパが来てくれてよかった。向かい合って布団をかぶった彼女は何でもないようにそう言った。このまま眠るのだろうか、と思っていたら、彼女の瞳が俺を写した。
「オッパがね、何を悩んでいるのか正直わからないの。わかってあげられなくてごめんなさい。」
やさしく、内緒話をするみたいに落ち着いたトーンだけど、その声にはしっかりとした意志があった。
「でも、ジョンハニオッパは、どんな格好してても、どんなメイクをしてても、いつでもかっこいいわたしのオッパだから。髪が長くても短くても、仕草が男らしくてもそうじゃなくても、痩せててもぽっちゃりでも、オッパはオッパだから。その事実は絶対、絶対変わらないよ。」
「…うん」
それから天使のように微笑んで、
「どんなオッパでも大好きだから、それだけはわかっていてね。」
ああ本当に、この子はたったこれだけの言葉で俺のことを救ってくれる。
俺は天使だなんだと揶揄されるけど、本当に呼ばれるべきはこの子なんだと思う。俺たちの中で一番辛い思いをしているのはAはずなのに、いやだからこそ、人の救い方がわかるのか。
すぐには治らないかもしれない。それでも、心が救われた気がしたのは事実だった。
「お前はさ、ずるいよ」
「どういうこと？」
「ずるさに気づきてないのが、ずるい」
なにそれ、とクスクス笑ってから、彼女はおやすみと呟いた。
今日はきっともう、飛び起きることはないだろう。何となくそんな気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 839人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SEVENTEEN」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cham(プロフ) - ヒカリさん» ありがとうございます。安心しました。楽しんで読んでいただけたら幸いです。 (2021年2月12日 23時) (
レス) id: ed95449b0c (このIDを非表示/違反報告)
ヒカリ(プロフ) - chamさん» 全然大丈夫ですよ！wwこういうのでなかなか自分の誕生日出てきませんよねww自分が推してるグループにまさか自分の誕生日が出てくるの初めてなのでちょっとびっくりしただけですよ！！なので全然気にしないでください！！ (2021年2月12日 22時) (レス) id: 60a403a386 (このIDを非表示/違反報告)
cham(プロフ) - ヒカリさん» ご気分悪くさせてしまっていたらすみません。 (2021年2月12日 19時) (レス) id: ed95449b0c (このIDを非表示/違反報告)
ヒカリ(プロフ) - 自分の誕生日と一緒でビビりましたww (2021年2月12日 17時) (レス) id: 60a403a386 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：cham | 作成日時：2021年1月30日 21時
