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と意気込んだはいいものの、引っ込み思案な私は話かけること以前に彼の目を見ることもままならなかった。
これは先が思いやられる、と頭を抱える。
やっぱり諦めようかな、とも思ってしまう。
向こうに、先輩がいる。
格好いい。すごい素敵。
先輩は同じ学年と思われる女の子数人と楽しそうに会話をしている。
途端に目を背けたくなった。
あの女の子の方が私の何倍も魅力的だし。
自分に自信を持てない。
やっぱり遠くから眺めることしかできなかった。
放課後の部活の時間。
先輩はサッカー部のキャプテンとして活躍している。
もちろんサッカーが上手だし、チームメイトに教えるのだって上手だ。
物陰からこっそり見ることしかできない私は、先輩の活躍している姿をしっかり目に焼き付けようと必死だ。
「A、こんなところで何してるの?」
「わっ!」
運が悪いのかなんなのか、陸上部の集会に向かう途中のカエデに見つかってしまった。
「い、いや、落とし物探してただけだよ......」
「嘘でしょ。休み時間に話してた気になってる人のことなんじゃないの?」
カエデはものすごく勘が鋭い。
こんなときにまで鋭くなくたっていいのにと思いつつも、いつでも助けてくれた友人だから打ち明けてもいいかなと。
「その気になってる人なんだけど、サッカー部のキャプテンの、あの先輩なんだよね......」
友人に言うのだって恥ずかしい。
恐る恐るカエデの表情を窺う。
「あの先輩格好いいよね!いいと思う!A、いつでも自信もって。そうすればきっとね?先輩に振り向いてもらえるよ」
緊張している私を優しく諭すようにためになる助言をくれる。
本当にありがたい。感謝しかない。
「カエデ、ありがとう」
「じゃあ、頑張るんだよ」
陸上部の集会に行ってしまったカエデを見つめながら、さっきの言葉を頭の中で反芻する。
「――いつでも自信をもって」
私に足りないのは、『自信』だ。
よし。部活が終わったら先輩に話かけてみよう。
震える足に力を入れて、歩みを進める。
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キャンディー(プロフ) - ついに待望の創刊号刊行ですね!待っていました!自分の書いた物語を世の皆さんに見てもらえるのはなんだか恥ずかしいような気もします。できれば各作者様のURL?みたいなのを貼ってくださると助かります! (2021年5月3日 13時) (レス) id: a896d747de (このIDを非表示/違反報告)
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作者ホームページ:なし 作成日時:2021年4月29日 10時