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いい人と結婚出来るとか、怪我をするとか、近いうちに大きな仕事が舞い込むとか。
大体の人間は、そんな日常的な未来が見えるらしいのだが……時折、死の未来を見てしまうこともあったと、オババは語る。
「あなた、近いうちに事故に巻き込まれて死にます」
オババはどんなに悪い未来でも、見えたものを包み隠さず、正直に伝えていたらしい。
当然そんなことを言われれば、怒り出す客というのも現れる。
中には、怒りのあまり怒鳴り散らした挙句、金も払わずに出て行ってしまった人もいたそうだ。
客の気持ちも分かる。
だって、当たると評判の占い師にいきなり死を宣告されるのだ。
そりゃふざけるなとも言いたくなるし、本当に死ぬのかもしれないという恐怖だって感じるだろう。
そして、そんな死を宣告された人々の中には、生き延びる方法はないのかと尋ねてくる者もいたそうだ。
未来を見ることが出来るのだから、死を回避する方法も当然分かるだろう、と。
床に額を擦り付け、嫁と子どものためにも死んでなどいられないのだと、涙ながらに懇願する男もいたと、オババは遠くを見るようにして語っていた。
「そんな人たちにね、私は決まってこう言ったのよ。残りの時間を悔いのないように過ごして下さい、大切な人たちに沢山の感謝を伝えてあげて下さい。って」
「助けてあげなかったの?」
幼い私の問いかけに、オババは悲しそうに笑って頷いた。
「未来にはね、変えてもいい未来と、変えたらいけない未来があるのよ。特に神さまが決めた未来は、絶対に変えてはダメ」
そう言ったオババの声は、真剣だった。
日本には "触らぬ神に祟りなし" という慣用句があると思う。
神に祟られたくないのなら関わるな、余計なことに首を突っ込むな、という意味の言葉だが……。
オババは占いだけに限らず、様々な事柄に対して「神さまには気をつけなさい」とよく言っていた。
「神さまにもね、人間と同じように感情があるの。怒ったり、喜んだり、恨んだりもする。だから、神さまを怒らせても、気に入られてもいけないんだよ」
オババはいつになく真剣な表情で言った。
真っ直ぐに私の目を見つめて、言い聞かせるように。
この言葉の重要性を私が理解するのは、もう少し先。
中学生の時に起きた、とある事件を経てだった。
この事件に関しては、機会があればまた語ろうと思う。
『夢風と学ぶアイヌ』(夢風)→←占い師の孫『第一話 オババ』(匿名希望)
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キャンディー(プロフ) - ついに待望の創刊号刊行ですね!待っていました!自分の書いた物語を世の皆さんに見てもらえるのはなんだか恥ずかしいような気もします。できれば各作者様のURL?みたいなのを貼ってくださると助かります! (2021年5月3日 13時) (レス) id: a896d747de (このIDを非表示/違反報告)
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作者ホームページ:なし 作成日時:2021年4月29日 10時