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名前・・・知ってたんだ。
「成績優秀の優等生で、暗いって言うけど俺から見れば落ち着いて大人びた雰囲気だしスタイルなんて上から80・52・83」
先生はさっき噛んで潰していた煙草を咥え治して、火をつける。
「こんな奴を振るなんて惜しいことしたな、そのガキ」
「・・・先生・・・」
「何その拳」
恥ずかしくなった私は顔が真っ赤だろう。でもそれ以上に、この先生を成敗せねばならない。固めた拳を振り上げて、先生に容赦なくくらわせる。
「あいたっ、こいつ眼球狙ってきやがる! 何だよスリーサイズは目分量だろ!!」
あっ、当たってた? なんて聞いてきたのでもう一発お見舞してやった。
「まぁだからって飛び降りはやめとけよ、痛いだろ」
殴られた場所を手で押さえながら取り繕うように先生は言った。
「・・・でも、途中で気絶するって聞いて・・・」
「しなかったらどーすんの」
ふぅ、とまた白い息を吐く。
「じゃあ問題。
「え・・・急に何を・・・」
「正解は約1.4秒でした。こんなんで気絶する暇あると思う?」
ドヤ顔で先生はこちらを向く。
「そんな無理に物理科教師キャラアピールしなくても・・・」
「アピールとか言うな。それにほら、死に顔晒されんぞ。最近のガキ共やたらSNSに晒したがるだろ。俺の失態すら嬉々として晒しやがって・・・」
『減給だけは!! 減給だけは勘弁してください!!(土下座)』
『しかし君ねー・・・』
「校長に呼び出されたときはもうダメかと思った」
土下座したんだ・・・
「ま、一番は」
ジジ、と煙草の先端が燃える音が微かに聞こえる。
「昔ここで失敗した奴がいるってことかな」
「え・・・」
はぁ、とつく先生の溜め息は相変わらず白い。
「まったく、こんな時くらい落ちるのやめようぜ。今時人生落ちっぱ下がりっぱなんだから。例えば成績、受験、就活」
だんだんと目のハイライトが消えていく。
「俺の給料・・・」
「結局下がったんですね」
「まぁそれはさておき。男の傷は男で埋めろって言うじゃん? さっさとその辺の男と新しい恋して忘れちまえ」
ひらひら、と片手を振る仕草の先生。煙草の火も同じようにゆらゆらと揺れた。
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作者名:クロサキ | 作成日時:2019年10月30日 22時