💫ㅤ海に溶ける ページ47
ㅤ
想うただ1人の為に着飾った。けれど、その人には見てもらう事は出来なかった。
風丸に手を引かれながら七汐は歩き。憎い程の青空を見上げ唇を噛み締める。
「いっちゃん」
「ん？」
立ち止まり、七汐へと振り向いた風丸が優しく首を傾げながら。
それは幼い頃から変わることの無い何処までも優しい暖かい兄の眼差し。
ずっと揺籃の様な波に揺られ、星に焦がれることも無く生きていたかった。
通りすがる歩行者達が2人を見付け“まさか”と口々に。
スマホを向けられ、撮られていることにも気付かない七汐は微笑んだ。
「王子様とさよならする」
「……はっ？」
目をぱちくりとする風丸に、七汐はだってさ〜と手を離して歩き出す。
「叶わない恋をするのも、焦がれるのも。幸せになるのも願えない…人魚姫が泡を選んだ気持ちが…わかっちゃった」
「A…」
本当はこの恋の呪いを解きたい。
喉を震わせ、届けたい想いがある。けれど、その一言が王子様を困らせてしまうことを知っている。
「まあ、私の場合は何も救ってないけどね」
ゆっくりと歩きだし、商店街を抜け。河川敷へと。
七汐に付き合う風丸は途中でアイスを購入し、半分を分け合う。
「そもそも話せるだろ」
「それもそっか」
全くお前は…と呆れたような風丸に七汐はおどけた様に笑う。
河川敷から川の眺め、七汐は胸元に揺れるペンダントに視線を落とし掌に転がした。
「…いっちゃん、海行こう」
「今から？」
「思い立ったが吉日だよ、行こ！」
「え、ちょっ、」
.
電車で数時間揺られ、2人は海の見える街へ。
夏真っ盛り。家族やカップルで海を満喫する浜辺へサンダルを脱ぎ、七汐はかけ出す。
「あまり遠くに行くなよ」
「大丈夫だよ〜」
波打ち際に立ち、触れる水に歓喜の声を上げる七汐は
海に帰る人魚姫だ。揺れるスカートが鰭の様に滑らかで、こんなにも海と空と太陽が似合う。
スカートを塩水に濡らしながら、七汐は眩しい太陽に目を細める。
今が昼間でよかった。夜空に見届けられていたなら、胸が痛くて堪らなかっただろう。
深呼吸をし、ペンダントを外した七汐は小さな貝殻を見つめる。
「いっちゃん」
「んー？」
近くまで波を立て歩み寄る風丸。あ、カニ…と小さく呟く姿に眉を下げて思わず笑ってしまった。
「ちょっと潜るね」
「ん、見てるけど深く潜るなよ」
「うん」
透き通る綺麗な海に、七汐は足を踏み入れていく。
脹脛、太腿に纏わりつくスカートが本物の鰭へと変わるように。
ㅤ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「イナズマイレブン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
楸(プロフ) - るふさん» フォロリク送らせていただきました！ (8月7日 23時) (
レス) id: f754f3bbe4 (このIDを非表示/違反報告)
るふ(プロフ) - 楸さん» え！よろしいのですか…！プロフに飛んでいただければTwitterリンク貼っているのでぜひ…！ (8月7日 23時) (レス) id: 8aec098e15 (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - るふさん» 確認してみたところまだ復活できました!!検索では反映されないと思うので、宜しければこちらからフォローへお伺いします (8月7日 11時) (レス) id: f754f3bbe4 (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - るふさん» まだまだ書きたかったシーンはあったのですがありがとうございます！占ツク用は削除してしまいまして…特に夢小説の事は一切更新されないアカウントで宜しければお伝えすることはできます！ (8月7日 11時) (レス) id: f754f3bbe4 (このIDを非表示/違反報告)
るふ(プロフ) - 返信ありがとうございます…！久しぶりに夢小説読んで泣きました(感涙)ぜひ楸さんのTwitterフォローさせて頂きたいのですがリンクから飛べず…アカウントの方は削除されておられますかね？？差し支えなければお返事いただけると幸いです！ (8月7日 1時) (レス) id: 8aec098e15 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：楸 | 作成日時：2023年6月28日 0時
