「恋」っていうから「愛」に来た【鬼滅の刃】

酒。 ページ33

これは、不器用自覚あり炭治郎の話です

我妻「だから！！善は急げって言うでしょ！？」

善は急げ

…良いと思ったことは躊躇わず行え。

竈門「急がば回れとも言う！！」

急がば回れ

…安全確実な遠回りをする方がかえって得策。

売り言葉に買い言葉というか

酒は呑んでも飲まれるなとはよく言ったものだ

恋の悩みなどは程遠かった炭治郎は

自分の不器用さと信頼のなさと

空回りばかりすることに対する不甲斐なさから

らしくもなくやけ酒をしていたのである

その顔は灼熱を灯す瞳に負けないほどに赤く色づき

鼻もくら、とした香りに毒されて

ほぼ本来の嗅覚を発揮していなかった

まっすぐに歩けたもんじゃないことは

やってみなくてもわかるものである

我妻「タンジロー…飲み過ぎなんじゃないの？」

竈門「ぜぇーんぜん！のんでませーん！！」

我妻「………はぁ」

まさか、あの炭治郎がな

こんなおっさんくさくなるなんてな

遠い目をしながら酒に浮かんだ月を捉えた

酒くさ、と店主にも言われるほどである

それだけ忘れたいというか、背けたい事実があるのだろう

大方、お嬢様のことであってると思う

お嬢様、家柄は申し分ないものである

加えて美人で健気で…礼儀もなっているとなると

こぞって求婚されるのも仕方ない

この前なんて小洒落た西洋かぶれの男が

その手のひらに口づけを落としていたものだ

それを丁度見てしまったのもいけなかった

本当に神様は意地の悪いことを考えていらっしゃる

竈門「俺は！どうせ！素直になれない！！」

我妻「言われなくても知ってるよ！！」

竈門「お洒落なんてわからないし、デェトなんて鍛錬しか思い浮かばん！！」

我妻「おまっ…それはやめとけよ？」

竈門「キザなセリフは吹けないし、ろまんちっくなことは言えない！」

我妻「お嬢様は炭治郎がいいんだよ。小洒落てなくても」

竈門「そんなこと、わからないだろう！？！？」

我妻「わかるよ！！お前の数倍はわかってるよ！！」

炭治郎、自信喪失である

やっぱり気にしてやがったなと

心の声が聞こえてきそうな顔の善逸は

ぶっ倒れそうな炭治郎から酒を取り上げた

流石に、お開きにするところである

我妻「炭治郎、そろそろ酒はやめたほうがいいよ」

竈門「なんでだ！」

我妻「やけ酒なんてカッコ悪いだろ！？！？」

竈門「善逸には言われたくない！！」

ふい、と拗ねてしまった炭治郎は

夢見がちな足取りで店を出て行った

善逸の声も聞かないで。

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