「恋」っていうから「愛」に来た【鬼滅の刃】

初恋。 ページ17

『椿…私は今まで貴方の意見を尊重してきたけれど』

「尊重してたかなぁ？」

『今回ばかりはおススメしないわ』

時透「そうだよ。僕とは不釣り合いって教えてあげなよ」

『この男！ほんとに最低最悪よ！！！』

椿さん、別名未来の時透夫人は

すっかり痩せてしまった手に力を込めて

時透無一郎の裾を精一杯繋ぎ止めていたが

今にも振り払われそうであった

お嬢様とは違い柔らかな髪は

撫でたくなる衝動に駆られる魅惑を放ち

ほんわりと笑みを浮かべる姿は町中の男が望む

言い寄られた数も少なくなく

引く手数多だと言うのに

その人見知りの性格からか

この歳になるまでの恋愛経験が全くない

いわば箱入り娘なのである

そんな彼女もひょんなことから

この霞柱の時透無一郎と出会い

雷のような初恋に落ちて、今。

時透「いちいち家まで送ってあげたんだよ？もう満足でしょ」

「いえ！私も連れて行ってください！」

初恋の人と結婚できない確率は99%である

邪魔といわれ、嫌いと言われ

それでもなお献身的に尽くしても

うっとおしいと邪見される椿さんは

想像以上にやっかいな相手に恋をしたらしい。

冷たく突き刺さる氷のような眼差しに

鋭利に尖った刃物の言葉。

傷ついているながらも不器用に空回りする姿は

まるで自分を見ているようで

やっぱり幼馴染だなぁとお嬢様は思うのである

「私、貴方のことが好きなんです」

時透「あぁ、そう。だから？」

「だから一緒に…」

時透「絶対に嫌」

今のは傷つくだろうなぁと

お嬢様は苦笑いをこぼした

昔からとなりにいる椿さんのことは嫌でもわかる

可愛いのに極度の人見知りだから

まず一言も話さない

そのせいで友達も少なく恋人もおらず…

そんな彼女が好き、と言うためにどれだけの壁を超えたことか。

たった二文字の癖にえらく恥ずかしいものだ

そしてその後に

心底うざったそうに嫌だと言われる気持ちは

想像したくもない。

今は受け流しているだろうが

あとで絶対たくさん泣くだろうな。

目元が赤いし少しやつれてる…きっと昨日の夜も泣いたんだわ

そんなことを思うとその苦しみが身にしみてわかった

自身のあの食事も通らなかった失恋の痛みを思い出す

『あなた、少しは配慮したらどうなの？』

時透「知らないよ。えぇと………炭治郎に嫌われてる人」

『私は嫌われてないわよ！』

時透「あ、ごめん。無自覚だった？」

『自覚はあるわよ！』

それでもやっぱり応援できないお嬢様であった

敬語。→←椿。

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