本気で抱きつぶされる話【鬼滅の刃】

時透無一郎の本気 ページ10

『旦那さん、今日はお疲れ様でした』

時透「いつもどおりだったけど？」

『いや、疲れてますよ！はい！』

彼女は非常に驚きが好きである

やっと結ばれた二人の関係がちぎれないように

必死に必死に繋ぎとめようとして

それでいて器用じゃないから空回りをする

驚かせたいのは飽きられたくないからである

そんな心配は無用なのに

と、何度も何度も言って聞かせても

気にしてませんと嘘を吐く

実はこの夫婦の奥さんも

無一郎に冷たくされた塩対応な片想い時期がある

そんな恋から結ばれたのだから

こうなってしまうのも仕方なかったのかもしれない

『まずはご飯です！』

時透「いつもどおりだよね」

細い腕が出せる力なんて

そりゃか弱いものでしかない

精一杯手を引いていくものの

いつもと何も変わらない日常に旦那さんは戸惑いを隠せなかった

でも彼女の頑張る姿が愛くるしいから

何も言わないことにする

愛されすぎ、である

『お風呂です！』

時透「…一緒に入らないの？」

『え！？』

彼女と風呂に入ることは滅多にないが

今日は特別ということで一緒に湯船に浸かった

裸なんて何回も見ているし

あえて言えば恥ずかしいことも経験しているのに

わかりやすく顔を真っ赤にさせて

体を必死に隠す姿がまた心をくすぐる

体の隅々までつけられたキスマークは薄れて

そういえばご無沙汰だったなと思い出した

たまらなくなって縮こまる奥さんの首を

旦那さんが優しく噛み付くと

『うぁ』

想像以上の蜜の声が漏れたものだから

旦那さんは驚いてすぐ風呂を出て行く

危ない。クラクラと揺れる欲望を

心の釜で煮込みながら服を着る旦那さん

あの１つの声で奥さんを泣かせてしまう自信があった

そんな姿を見て奥さんはため息を漏らすのである

その紫陽花の瞳を憂いで濡らして

甘噛みされた首を撫でつつ愚痴をこぼす

なんと色っぽいことだろうか。

無一郎も大変である

『なんで最近…』



時透「ちょ、ちょっと……」

『旦那さん』

時透「僕、明日早いんだけど」

『旦那さん』

抱いてくれないのかな。

ふと思いたってしまってから

やけに言動が気になるようになり始めた

飽きられたのではという不安に埋もれ

奥さんはその色香を持って旦那さんに願うのである

『だ、抱いて下さい』

時透「っ！！」

その唇の甘さは無一郎だけが知っている

堪らない殺し文句に口付けはいけない

時透「優しくしてあげないからね」

思わず抱き潰してしまうから。

夜を日に継ぐ→←夫婦の挨拶

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す