本気で抱きつぶされる話【鬼滅の刃】

不死川夫婦の出会い ページ40

鬼が家族の中に溶け込んでいるなど

信じられることではなかった。

ましてやそれが十二鬼月など

信じていいことなんかではない

その鬼は大家族の中の長男で

二つ上に姉がいると噂である

警戒心が強く、潜在能力も大きいため

鬼殺隊も手を焼く鬼であり

実際に何人もの若手が食われ、

その分鬼は強くなっていった

そんな鬼に近づける方法が唯一。

たったひとつだけ、見つかったのだ

不死川「どうも」

あぁ、笑顔が似合わない顔である

本人も辛かろうに、その意地にかけて

必死に好青年を演じる姿は滑稽だった

その顔の傷は隠しきれない性分を表しているのに

ふわ、とした微笑みで迎えられたのだから

拍子抜けしてしまう

シワが目立ってきた頃の腰の低い女

それが彼を喜んで婿に迎えた女である

「私は子宝に恵まれてねぇ……でも、長女は私を心配して家を出なくて、長男も病で……」

潜入任務、といえば割り切れる

そう信じてきたものの

鬼に近づくために鬼の家族と結婚など

馬鹿馬鹿しくて笑えない。

背の小さな女が子供を産めるなど信じられなかったが

その後ろ姿が亡き母に重なってみえたものだから

何処か信用を落としてしまった

長男は、病で、外に、出られない

使い古された文句だなと心の底で渦巻きながら

鬼であろう長男の部屋を横切る

このこびりついた匂い。あぁ、考えたくもない

きっと、これは……

「不死川さん、私の娘のところに来てくださりありがとうございます。優れたとは言えませんが優しい子なのでどうか…」

襖が開いた

好きでもない奴と結婚など

愛してやれるはずがない。

鬼の姉などもってのほかである

実弥は女に妙な期待をさせないよう

母に似た義理母を遠ざけた後

顔を一回も見ずに冷たく言うのである

不死川「俺はお前を好きになるつもりはない。分かったら妙な期待はすんなよォ」

空気が揺らいだ

目の前で深々と頭を下げている女の肩が震えている

驚愕、焦燥、戸惑い、後悔、不安

溢れ出る雰囲気が物語っているのである

めんどくさいという風に頭を乱雑に掴んでは

顔を上げさせ、再度忠告しようとする

が…

『うっ……』

不死川「…は」

その顔があまりにも可愛らしいものだから

言葉を失ってしまった

待て、これは、この感じ。

聞いた、見たことがある

この女に気に入られたい、愛する権利が欲しい

待て、なんだこの心臓の煩さは。

これは、笑えない。

一目惚れだなんて。

そして、盛大にやらかしただなんて。

終わり ログインすれば
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