本気で抱きつぶされる話【鬼滅の刃】

続き ページ36

「母さん、母さん。童磨が手を握ってくれるって」

母さんと呼ばれた女もとい童磨の嫁は

金を貢いでも、愛を囁いても

ちっともなびかない女である

ただ笑顔を向けられたら笑顔を返し

言われたことはそのまま繰り返し

貰ったらお返しすることを繰り返す異常者だった

しかしながら

彼女の心を溶かすような行動は

金なんてかからないし、命もかかわらないことだ

ただ、手を繋ぐとか。

頭を撫でてやる。とか、そんなもので

彼女の素直な本心はほろりと顔を表すのである

『あ………の…』

彼女も子供が生まれて

人間らしさが戻ってきたように思えた

鬼になって人間らしさなど臭すぎて笑えるが。

最初はうるさい餓鬼など殺してしまうが勝ちだと

童磨は思っていたのだが

みるみるうちに頰に赤みがさして行った彼女を見ると

どうもそれが難しいことのように思えて。

なんだかなぁ。という次第である

「母さんは手を繋ぎたいって！」

あの…から先の言葉は彼女はもっていなかった

そもそも意見をするという概念が潰されてしまったのだろう

不思議そうに物悲しそうに首を傾げる

その姿は咲き方を忘れた梅の花のようで

みかねた子供が助け舟を出したのである

ふわりと小さくて弱々しい手が

鬼の凶暴さを光らせた童磨と

無垢の人形を秘めた彼女の手を引き寄せて

重ね合わせる

するとどうしたことか

そこから何か、走るように

まるでそこに心臓があるかのように

急に鼓動が早くなったものだから

訳がわからず二人とも汗を流すのである

そして心底困ったように顔を赤らめて

こんな経験、初めてだと

心の中で責め立てるのである

なんだこれは、なんだこれは。

うるさい、突然心臓が仕事をし始めた

おかしい、おかしいと病気かもしれないと

首を傾げてしまうのだ

「二人とも子供だなぁ」

童磨「…君には言われたくないな」

長生きなんだけどな

と彼女の子供にいうと

長生きのくせに。好きな人と手も繋げないのかよと

いたずらに笑われたものだから

また二人は驚いて顔を見合わせるのである

スキ？スキ？空き？隙？

スキとはなんだと言いたげな顔は

やっぱりどこかほんのり赤くて。

わからないなぁと思う疑問も消えなくて。

でも、なんだか居心地がいいなんて

うるさいくせに、体が熱いくせに

悪い気はしないんじゃないかって。

思う二人の影は優しく夜に溶けていた


遊び人だけど本命にはピュアって人がめっちゃ好きなんで…童磨さんにやってもらいました。

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