本気で抱きつぶされる話【鬼滅の刃】

「河原撫子」 ページ28

ネタバレを含みます！！！


『炭治郎様はとても危険なお仕事をしていらっしゃいますよね。この傷も…上弦の鬼と戦って…』

彼女が優しく顔の輪郭をなぞった

奥で禰豆子が今日の晩御飯の支度をしている

多忙な夫婦の時間を取ってあげたいと

禰豆子が率先して家事を引き受けてくれたので

奥さんと旦那さんは何気ない、幸せな夕暮れを過ごす

ふと肩に擦り寄ってくる奥さんが

あまりにも可愛らしいものだから

炭治郎は初々しくも顔を赤らめるのである

『椿…いや、時透夫人が言っていたんですけれど』

椿、というのは時透夫人の旧姓である

幼馴染の二人は何かあるたびにお互いに話し合う

奥さんは柄にもなく泣いていた幼馴染の様子が忘れられなかった

『もし旦那さんに会えていなかったら、どうだろうって』

それはつまり

旦那さんが亡くなっていたらどうなるのだろう

ということなのだろう

炭治郎は一人、帰ってくるか分からない旦那を

待ち続ける奥さんの心細さを今、初めて知った

『きっと私はワガママばかり言っていましたよね』

竈門「多分、40歳になっても50歳になっても言っていたな」

『結婚しているでしょうか』

竈門「それは俺が考えたくない」

『ふふ…そうですね。私も考えたくないです』

彼女だって美しい容姿の持ち主だ

引く手数多だったのだろうと

炭治郎は薄々気づいていた

きっとワガママだって叶えてくれる

そんな御曹司がこぞって現れただろうに

塩対応しかしなかった炭治郎を選んだ奥さんは

まさに尊敬に値するものだ

奥さんが炭治郎を諦めて

他の男に擦り寄っているのを想像するだけで

炭治郎は腹の底から不快感が湧いてしまう

『私、ずっと一緒にいたいなぁと思ったから。炭治郎様に嫁いだんです』

竈門「うん」

『まだ、結婚したばかりじゃないですか』

奥さんが羽織をつよく掴んだ

行かないで、と昔縋り付いてきた感覚を思い出す

懐かしいなと思う反面

彼女に強いてしまう悲しみを噛みしめる

『25歳になっても一緒にいてくれますか』

竈門「…」

『30歳になっても、40歳になっても、もっと歳をとって、しわくちゃになって』

奥さんの瞳から涙がこぼれた

震える唇が優しくワガママをこぼしていく

『出会った頃を思い出せなく、なっても…お互いの名前が、思い出せなくなっても…一緒にいて下さいよ』

竈門「……きっと幸せだろうな」

『叶えて下さいよ？叶えてくれないと許しませんから』

……もうすぐ25歳の誕生日がくる

ダイタンナ。→←霞みがかった夢を見た。

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