本気で抱きつぶされる話【鬼滅の刃】

羞月閉花 ページ16

竈門「相手がいるから…」

「知ってますよ！？嘘なんでしょう！？」

その眼差しは太陽のように暖かいながらも

激情的ではなく水のように受け止めてくれる優しさと

その日向の微笑みで数多くの心を撃ち抜いていく

言い寄られてしまうことも少なくなく

強引に手を掴まれては求婚されることもある

そんなこんなですっかり色恋が苦手になった炭治郎は

決まって相手がいるからと嘘をついた

しかし街一番のワガママ娘はそれでもしつこくて

信じなかったものだから、カナヲに頼み込んで

恋人のフリをしてもらったこともある

でもそんな騒動を踏まえながらも二人は今…

竈門「嘘じゃない。結婚を約束している相手なんだ」

ぎこちないながらも交際を始めていた

真摯な炭治郎の瞳に射抜かれて

あぁ、嘘じゃないんだななんて

新米の女は思うわけである

「ならキスぐらいしてください」

竈門「それは無理だ」

即答、ではあるが炭治郎は実は押しに弱い

というか、なんだか昔の恋人が思い出されて

あの時も十分可愛かったなぁなんて

うつつを抜かしてしまうのだ

腰に必死にまとわりつく女に

心底困ったように眉を下げ

ため息をつきながら外を見やると

紫陽花が雨に打たれていた

竈門「あ」

赤い傘は彼女に似合った

蒼くて、薄くて、小さな華のような彼女

黙っていれば顔は一級品だと

昔の炭治郎もよく思っていた

人混みの中でもすぐ見つけられるのは

その美貌と惚れた弱みからである

雨が強く降っていた

なんだか彼女との恋がみずみずしく、新鮮に思えた

女の腕を振りほどき

まっすぐに走っていく姿は

まるで旦那のような顔つきである

竈門「A！なんでここに！」

『え！？あ、炭治郎様！？！？』

女は心底嫉しそうに彼女を睨んだ

傘でよく顔は見えなかったが

炭治郎の信じられないくらいに鼻を伸ばした顔は見えた

つまらない、と言った風に炭治郎の後を追いかけて

恋人に１つ喧嘩を売るのだ

「へぇ？あなたが炭治郎の恋人？」

しかしそこで言葉が潰える

なんたって傘の下から覗いた顔は

月の人なんじゃないかって

かぐや姫はこの人がモデルなんじゃないかって

思えるぐらい美人だったからだ

これには女も赤面する他ない

炭治郎が妬ましく思えるほどの女性だ

『そう言われると照れますね』

ずっきゅーんと心がなった

女は新しい恋に落ちてしまった

竈門「どんだけ誑し込めば済むんだ」

『そんなつもりは…』

竈門夫人、おそるべしである

宇髄天元の本気 激甘注意→←嫉妬は人を鬼にする

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