本気で抱きつぶされる話【鬼滅の刃】

嫉妬は人を鬼にする ページ15

へんたいです！

我妻「ねぇ」

ある昼下がりのことである

人から忘れ去られたようなところに

ほつ、と寂しく立っていながら

客足が絶えない甘味屋さん

その味は食べたことを後悔するレベルであり

我妻夫婦もとい嘴平夫婦もこのお店に虜である

そんなほのぼのと流れる時間に

善逸がその細い腰を引き寄せて

その耳に甘すぎる誘惑を垂らす

精一杯の色気で殺すのだ

我妻「か、わ、い、い」

一言一句漏らすことなく注ぎ込む

彼女の顔が真っ赤になっていくのを楽しんで

彼女の背筋を甘い電流が走ったのを喜んで。

奥さんが思わず腰が砕けそうになって

善逸に倒れこんでしまう

これも策略だ

かわいい

これは善逸が優しくするときに

絶対に言う言葉。

その体で幾夜も重ねて

骨の髄まで染み込ませた魔性の言葉。

奥さんは思わず甘い吐息を漏らした

我妻「か、わ、い、い」

覚えておけ

そう言わんばかりに耳に囁いた

その囁きは還元されることなく脳へ響き

奥さんの記憶の箱をこじ開ける

視界から見えるのは

暗い天井と獣のような善逸の瞳

体はもう熱くて熱くて、溶けていくような。

精一杯、背中に傷を残せば

それは引っかき傷となり善逸をまた喜ばせる

そんな甘美を差し出されて

奥さんは顔を真っ赤に真っ赤に惚けさせていく

『い、いい、なあ、り…』

我妻「んー？」

旦那さんの顔は

いつものように穏やかながら

泣き虫のあのおどおどしさはなかった

とらえられている、狙われている。

独占されてしまいそうだ。

その、瞳は

独占欲と嫉妬にまみれていた

また怪しい手つきで奥さんの腰を撫でて

その羽織の中に引き寄せてしまう

小さな奥さんは善逸の羽織の中で

強すぎる香りに脳がくらくらした

その旦那さんが酷い顔をしているとも知らないで。

我妻「……」

善逸がその敵意を持って

鋭く鈍いナイフの眼差しを向けた

あふれんばかりの殺意の目

思わず命の危険を感じて悲鳴が漏れた

その行き先は

奥さんのことを狙っていた阿呆な男たちである

鬼狩り、というより最早善逸が鬼である

その心臓を食い散らかさんとばかりの顔

悲鳴をあげて逃げていく男達を尻目に

奥さんをその羽織から解放した

『はー…はー…』

奥さんはすっかり甘くくらくらになっていて

善逸はさも面白そうに色っぽく頰を緩めた

我妻「ね、ここの辺りにさ。宿があるんだけど」

いかない？

まぁ、我慢できるならいいけどね。

答えなんていうまでもない

羞月閉花→←雄弁は銀沈黙は金

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す