私の宝物は何がなんでも ページ6
シリアスです！
今日は運が良かった
少し気味が悪いくらいに
しかも驚く程天気に恵まれていて
雲ひとつない晴れ渡る空だ
でも暖かい風がなんだか癪に触る
どうしようもなくそわそわして
足を早めた
風邪を切り開いて進む
肌に当たる風は生温かった
春の宮「ナルトは？」
いつも玄関で待ってくれているのに
やけに広くもの寂しい部屋が
ナルトがここにいないという事を物語った
トイレ…ではない様な気がする
念の為荷物をリビングに置いて
トイレも寝室もバスルームも
何度も何度も点検する
春の宮「いない！いない！」
もしかしたらまだ帰ってないだけかもしれない
だったらまだアカデミーにいるよね
大丈夫アカデミーに行ってみよう
アカデミー
春の宮「ナルト！！」
広い校庭にぽつんと立っている大木
太陽は大きく傾き世界は黄昏に包まれていた
照らし出す黄昏はなんだかもの寂しく
すぐにナルトと家に帰りたかった
足早に駆けつける
砂が舞い始めてナルトの姿も鮮明になる
こう見るとナルトの背中って小さいんだな
ただの感情移入かもしれないが
なんだか心が縛られた
抱きつきたくなって
小さな子を守ってやりたくて
白い手を伸ばす
オレンジ色の背中に手が届きそうな時だった
掠れた声を拾ったのは。
ナルト「ななせんひゃくきゅうじゅうさん…」
7193
まさかここまで数えたというのだろうか
1から？
でもそんな何の為に？
だって…………
春の宮「ナルト？何して…」
ナルト「ねーちゃん？隠れんぼしてるんだ！
初めて誘われて7200秒数えなきゃ駄目らし いよ！」
だって…………
周りに誰もいないじゃないか。
掠れた声
震えた肩
啜る音
そして背中に貼られた
化けギツネ
と書いた張り紙
手を
手を精一杯伸ばして
ありったけの力で張り紙を引き千切って
優しく包み込んだ
何でそんなにするんだよ
騙されたって嘘だって
分かってるだろ？
春の宮「ナルト帰ろう もういいよ 帰ろう」
歪む視界に悲しくて苦しくて
手に力を込めた
泣かないで
元気出して
何て言えばいい？
こんな惨めに泣いている私が
何を言ったら響くんだろうか
ナルト「ねーちゃん、ねーちゃん」
流れる涙に、鼻声の声が
心にグサグサと突き刺さり
ドロドロとした感情が
溢れ出す
黄昏時に
そんなに泣き出すナルトの声に
何かが切れた音がした
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作者名：ゆきぽん
| 作成日時：2018年3月26日 22時
