本気ではら .ましてやる。【鬼滅の刃】

時透夫婦の春の風 ページ44

今回こそは終わったな

彼女は枯らした涙をさらに絞って流した

真っ赤に腫れた左足には鬼の手形

そして真っ青になってしまった右手は動かない

昨日、夜中の丑の刻の頃に

突如鬼に襲われた。

寝ていたからか、左足を強く掴まれるまで気づかなくて

そして投げ飛ばされて木にぶつかって…。

鍛錬もしていない彼女はすぐに骨を折ってしまったのだ

その後、無一郎が鬼を切ったものの

彼女はこう思った

かっこいいなぁ…。

でもきっと私の為なんかじゃないんだろうな。

やっぱり、悲しいな………

『泣いてはダメ、泣いてはダメ…』

泣くなと言いながら彼女は涙を流した

太ってると言われたから

必死になって美味しいものを我慢して

倒れそうになるのも我慢して痩せたのに

今じゃ栄養失調みたいに見える

どんなに冷たくされても

それでも好きだったから毎日ついていったのに。

もう、遅い。

朝起きたら隣にいなかった。

また、置いていかれたんだと

布団も被っていない体で思った。

怪我もそのまま。

走ることもできない。

完全に負けてしまった。彼女の恋の戦いは。

『帰ろう。故郷に帰ろう。そしたら沢山美味しいものを食べる。沢山、贅沢する。沢山、泣いてやる。そしていい男を捕まえる』

彼女はなけなしの持ち物をまとめて

体に鞭を打って動き出した

街まではまだ距離がある

ズキズキと痛む腕に涙がこぼれる

でもそれよりも失恋の痛みの方が酷くて

さらに涙をこぼした

ひどい顔なんだろうなと思いながら

彼女はゆっくり歩き出した。





街に着くのには時間がかかった

三日は歩いた気がする
おかげで死にそうだ

きっと匂いは酷いし、泣いたせいで顔も酷い。

怪我をしているから歩き方も変だし…。

さっきから見知らぬ人から痛い視線が注がれる

すこし鏡で自分の姿を見たけど
すごくみすぼらしかった

こんな女に誰が恋をするだろう

「大丈夫ですか？もしよろしければ…」

でも情けはかけて貰えるらしい。

心優しいお婆さんに声をかけてもらった

この人がいなかったら彼女はあの時死んでいたかもしれない。

ただ手を引かれて甲斐甲斐しく世話を焼かれた

もう全然会わなくなってしまった孫がいること

店の営業が体に答えること…

そんなことを話して貰いながら

彼女はその酷く汚れた顔を拭いてもらった

「わっ。すごい別嬪さん！凄い美人だがね」

するとその下からは月の人のような美貌が現れたものだから

お婆さんは驚いて腰を抜かしたのだった

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