本気ではら .ましてやる。【鬼滅の刃】

時透無一郎の本気 ページ22

時透「ただいま」

『おかえりなさいぃいぃ！！』

空はもう黄昏に食べられていた

夕日が山の端に溶けていく

横から包み込むような夕焼けに

思わず家が恋しくなる時間帯だ

藤の花が咲いている庭を通ると

そこには縁側とそこから飛び出してくる奥さんが見える

狼から逃げる子羊のように

軽く空を飛ぶように旦那さんの胸に飛び込んでくる

そんな奥さんの名前は時透Aさんである

時透「いつも元気だね」

『元気じゃないです』

時透「ほら、自分で歩ける？」

奥さんをがっしりと捕まえた無一郎

表情は本当に少しだけ明るくなったが

ほぼ無である

しかしそれでも奥さんの隣を歩く姿は優しく

その眼差しは柔らかく心地が良かった

玄関を先に無一郎が開けてやると

嬉しそうにありがとうございますと彼女が微笑む

この夫婦、まさに可愛らしく微笑ましい二人であるが

巷では豹変夫婦と呼ばれている

『ご飯も作ってありますし、お風呂も…』

奥さんはその琥珀のような瞳を持ち

寸分の狂いもない顔立ちをしていて

寝顔などはまさに人形そのものだ

実はそんな奥さんは極度の怖がりで

無一郎がいないと人と話せないし

怖くて動けなくなってしまう

街ではその美貌ゆえに

たくさん人形と間違えられて苦労が絶えない

しかも言い返せないものだから困ったものだ

そんな奥さんを毎回迎えに来てくれるのが無一郎なのだが。

お互い、他人には全く別の顔をするくせに

夫婦のなかでは優しい顔を見せる

それだから豹変夫婦と呼ばれるのだ

時透「…布団も敷いてあるんだ」

『…』

時透「少し早くない？もっと遅くてもよかったのに」

寝室の横を通るとそこには太陽の香りが残る

布団が敷いてあった

不思議に思った無一郎はふつうに質問したのだが

真っ赤に染まった奥さんの顔を見て

一つ悪戯に微笑んだ

時透「もしかして、期待してた？」

『いっ…………』

時透「図星だね」

奥さんの顔は困ったように真っ赤に染まるが

その瞳は妖艶に揺れて誘うようだった

少し○いを持ったようなその目。

目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ

時透「僕の奥さんは本当に可愛いなぁ」

そんな眼差しを向けられて我慢できるわけがない

強引に手を引いて寝室へと足を運ぶ

柔らかい布団の上に押し倒すと

奥さんの喉がゴクリとなったのが分かった

時透「あ、いま想像した？」

大丈夫。想像よりもずっといいよ

奥さんにそう囁くと甘い声が漏れた


夜はもう来ている

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