平穏に生きたい 2

43 恋愛 ページ43

「お節介は相変わらずよね。」


『師匠･･･。立ち聞きなんてらしくないですよ。』


「アンタたちがそんなとこで喋ってるのが悪いんでしょう？」




師匠に何を言ってもしょうがないのでAは諦める。




早々に会場に戻ってもらおうと口を開きかけた時、なぜかニヤニヤ笑いながらコッチを見ていることに気づいた。




「にしても･･･ちょくちょく話してる茶色髪の教師、えーっと誰だったけ？」


『ダリ先生ですか？』


「そうそう、あれがアンタの好みとはねぇ。」


『はい！？』


「あれは苦労するわよ〜。」


『まじで、やめて下さいよ･･･。』




音楽祭の途中、何度かダリと話す機会があった。それを見られてしまっていたらしい。




「あら、音魔の私(アタシ)に聞き分けられない心音はないのよ？？」


『確かに、他の教師の方々の中でフツーに仲がいいとは思いますけど、そんなつもりじゃ･･･。』


『それに、私が誰かに恋愛感情を向ける機会は一生来ないですよ。』




そう言うと、師匠に思いっきりデコピンされる。




『いたッツ。』


「アンタのそーゆー卑屈なとこ嫌いよ。」


「いーい、愛はね育むもの。私とデルちゃんのような関係のことを言うのよ！！」


『分かりませんよ。もっと具体的に言ってくれないと･･･』


「あーもう！ こういうことに関してはガキのままなんだから！ 一度だけしか言わないからよく聞きなさいッ。」


「好きな人って言うのはね、一緒に過ごしてて、時間なんて忘れるほど愉しい音を奏でることができる人のことを言うのよ！」




師匠は苦しそうな顔をして続ける。




「いなくなったら･･･思いも伝えれないまま、記憶だけがいつまでも残るのよ･･･。」


『･･･師匠。』




なんでそんな悲しい顔をしてるんですか。そんなにデルキラ様のことが大事だったのですか。いつもの楽しい心(こえ)が聞こえてこないですよ。私に何かできることはありますか。そうAが声をかけようとした時＿＿＿＿＿




「お二方ー、もうすぐ後半の部が始まりますよー。」




二人を見つけた他の教師に呼びかけられる。




その呼びかけで師匠は普段通りに戻り、




「ほら！ ガキどものステージが始まるわよ！」


「どんなもんか見てやろうじゃない。」




と言って、会場に戻ってしまった。


＿＿＿

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