陽は落ちている (ページ1)

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天使になりたかったページ1

日の光の下で太陽の翼を持つ双子がじゃれているのを、彼女は廊下から見ていた。
彼女らの頭上には丸いわっかがある。
天の使いである彼女らは今、久しぶりの休日を二人で遊ぶことで費やしていたのだ。
それを見ていた白百合はそっと目を逸らす。
リリー=フォーサイスには翼がない。
天の使いとしての象徴である翼を、彼女は与えられなかったのだ。
だから下へ降り働くことも叶わず、こうして雑用をこなしている。
炎から作られた彼女らとセフィラたちはそれぞれ自らの色の翼を持っているのに、自分だけ翼がないというこの現状は、まるで自分だけが天使でないといわれているようで。
ぴと、と頬に冷たいものを当てられて飛び跳ねる。
驚いてそちらを見れば、そこには右手にカップを持ったケセドが立っていた。
セフィラは天使としての名と別に、称号のようなものを与えられている。

「そんな辛気臭い顔してどうしたんだ？」
「ダニエルさん……今はケセドでしたね。
……なんでA様は私に翼をくださらなかったんだろうと思って。
あのお馬鹿さんにも翼はあるのに」
「そんな風に言うもんじゃないぞ、リリー。
ただまあ……Aの考えは俺にもわからないからなんとも言えないけど、翼がなくても大丈夫だって。みんな優しいだろ」
「そうですけど……」

A。アイン。
生命の木と呼ばれるこの場所を管理する、神に選ばれた他のセフィラとは少し違う存在の天使。
彼は今セフィラと呼ばれる彼らの上司に当たり、彼の意向一つで神以外に唯一翼を与えることを許された存在。
本来カルメンがその立ち場になるはずだったのだが、カルメンが辞退して今に至る。
彼が何を思い生命の木の管理人になったのか、何を思ってセフィラを彼らにしたのか。
太陽の片割れであるカルメン以外にその思考を読むことはできない。

「仕事が大変なら手伝ってやろうか？」
「……いえ、これは私の仕事ですから」
「そうか。頑張りすぎて転ばないようにな」
「そんなヘマはしません！」