祭りはすぐそこ。 ページ30
二学期は早くも一ヶ月が過ぎ、十月。
運動会の季節だ。俺は例年、目立ちたいが為に選抜リレーだけ出て帰ってはジイちゃんとシンイチローに怒られていた。
だが、今年は違う。
「Aも代表だろ？」
「うん！後全員参加の以外は、借り物競走に出てって言われたよ。でも保護者の……」
スズネの体調が最近悪いらしい。先月はニ週間も入院していた。
「……どうせジイちゃんとシンイチロー来るし、ワカとベンケーにでも頼めよ」
あいつら最近更にAにべたべたすっから本当は嫌だけど。特にワカ。
「二人とも忙しくないかなぁ。聞いてみる」
Aの為なら臨時休業でもして来るに決まってる。運動神経は申し分ないが、どこの親バカよりも騒ぎそうだ。
加えて、最近はシンイチローのバイク屋に出入りしてる初代黒龍の連中までAを溺愛していると聞いた。変な目で見る奴は間違いなくシンイチローやワカたちに絞められんだろうから、そこはまぁ助かる。
「Aちゃん！俺も代表になったんだ、よろしくね！！」
「うん、女子は私と奥野さんだって。頑張ろうね」
「はっ。俺とAがいて負ける訳ねーだろ」
「吉野くんと奥野さんも速いって聞いたよ。楽しみ」
せっかく俺が隣の席で牽制していてもAに近付く図々しい男にはそろそろわからせてやろうかと思うが、バレたらジイちゃんの拳骨どころでは済まないだろうから耐えてる俺はオトナになったと思う。
「そうだ、万次郎。圭ちゃんの運動会も同じ日かな？」
「多分な。でもあいつ多分出ないんじゃね」
「え？何で？」
「ダチいねーだろ。いたらあんなしょっちゅう俺に引っ付いて来ねーよ」
「それは万次郎も……いひゃい、いひゃい」
細っちいくせに、ほっぺ柔らけー。
「それよりエマと違う組になっちゃったね」
「あー、あいつ赤っつってたっけ？戦力外だし良いだろ」
「そうじゃなくて。真くんどっちも出るなら忙しそう」
……確かに、シンイチロー体力ねーし。年寄りでもジイちゃんのがマシかもな。
そうして今日も祖母ちゃんの身の回りの世話があるAは帰って行った。
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作者名：カーター千之助 x他1人 | 作成日時：2023年5月6日 4時
