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「万作さん、ありがとうございます!でも明日も学校があるので……」
「A姉泊まれば良いのに!!」
「お、エマのくせに名案じゃん」
「俺ン家でも良いよー奥サン」
「"奥サン"だぁ?さっきから調子乗ってんなよワカ、飲んだら基本シンイチローの部屋で雑魚寝してんじゃねーか」
「若、万次郎を煽るんじゃない……お?これも美味いな。Aが若と帰ってくる途中にスズネさんに聞いたが、親父さんが格闘技をやっとったんじゃと?」
「コンバティブ陸軍格闘術で最高レベル保持者だったという、あ……日本のご年配の方に米兵の話は戦時中を起こさせてしまうから良くないと聞きました。万作さん、軽率にごめんなさい」
「まさか、気にしておらんよ。寧ろ興味深いわい。見なさい、Aより十年食ってる真一郎も若も弁慶もさっぱり訳がわかっとらん。お前たちも阿呆ばかりやってないでちっとは賢くなれ」
「「「……スンマセン」」」
「お袋さんは生前何を?」
「ファッションモデルです」
「「「あー……」」」
Aを改めてマジマジと見ては納得したように頷く、綺麗に揃った一連の動きはシンクロナイズドスイミングのようだった。俺も含めて。
確かに祖母ちゃんも美人だしな。
「気になってたんだけどよ。Aはずっとアメリカにいたのに、何で俺より難しい日本語知ってんだ?」
「場地がバカなだけじゃね」
「うっせ!」
「ママがどっちも中途半端にならないように、家族とも家では英語禁止、外では日本語禁止って分けていたの。たまに混ざっちゃうけど。あと、週末ニューヨークの日本文化の学校に行ってたんだ」
「"日本文化の学校"……?何それ?」
「日本舞踊とか茶道とか華道、書道とか、古武術とか……駐在の日本人パパやママが教えてくれるスクール。そこで色んな世代の日本人友達も出来るの」
「そりゃ凄ぇな!!礼儀正しい訳だ」
「海外で日本文化が知られてるというのも嬉しいものだな」
「ウチは着物着てるA姉が見たーい!!」
妹の一言に、野郎共が「俺も俺も」と騒ぎ出す。「エっロそ」と放った酔っ払い白豹はベンケーに殴られていた。
「じゃあエマ、今度一緒に着ようね」
その後やや押し問答こそあったが、Aがエマの部屋、圭介は万次郎の部屋、ワカとベンケーは俺の部屋に泊まる事となった。
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作者名:カーター千之助 x他1人 | 作成日時:2023年5月6日 4時