それはまた話が別。 ページ18
事件から数ヶ月が経ち、弟たちの夏休みも終盤。涼しい日も増え、随分と過ごしやすくなったように思う。
退院した春千夜と万次郎の間にはやはり何かシコリが残ったのか、春千夜が以前のように佐野家に顔を出す事はなくなった。こればかりはデリケートな当人たちの問題だ。
また、唯一春千夜と変わらず親しくしているA曰くーー弟はそれが面白くなさそうだがーー今や武臣は豪遊三昧、千咒との仲も拗れ家を出た春千夜は小学生にしてほぼ一人で暮らしているらしい。
心配した俺が「大丈夫なのか」と問えば「ハルは家事が出来るから問題なさそうだけど、心配だからたまに見に行ってる」とAは答えていた。
共に過ごす時間の経過と共に、Aが俺とワカとペンケーに対し完全に敬語を抜いて話してくれるようになった事は、俺たちの嬉しい心のメモとして記録しておく。
しかし、この状況は頂けない。
「真チャン、今日もA来ねーの」
「俺ら一週間会ってねーぞ。なぁ？青宗」
「うん」
人の店でひっくり返したビールケースの上に伸びるどこぞの白豹に、その横で見本のようなヤンキー座りするどこぞの赤壁。
そして、A来てる？が挨拶代わりになって来た積んだタイヤに腰掛けるバイク大好き少年、乾青宗。
「んな毎日の予定なんて知らねーし……てかお前ら仕事行けよ！青宗、学校は！？」
「今日ジム定休日」
「まだ夏休み」
「真、ひと段落ついたらA誘って昼行こうぜ！！」
ベンケーが言うなり素早く携帯を取り出したワカ。
「お前ら彼女の一人や二人いねーの？」
「聞いた？ベンケー、青宗。最弱王が何か言ってンね」
「ジムの女の人、皆ワカくん目当てでしょ」
「ワカはげんなりしてるけどな。青宗も学校でモテんだろ？」
「A以外興味ない」
作業する手こそ止めずに黙って聞いてりゃこいつら……、
「青宗以外ロリコンかよ！！」
「あの色気と甲斐性がありゃー充分」
「二十歳とアラサーになれば悪くねー歳の差だ」
「あ、返事来た。俺迎えに行ってくるワ」
颯爽とザリに跨り、店を後にしたワカに頭が痛くなった。
まあ、Aとメシとなれば作業が進む俺も正直こいつらの事言えた身ではない。
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作者名：カーター千之助 x他1人 | 作成日時：2023年5月6日 4時
