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「マリウス、文脈がめちゃめちゃで二人とも困ってるから」
ぽす、と後ろからマリウスさんの頭を軽く叩いて現れたのは中島さん。
私の未だ飲み込めてない表情と動揺した佐藤さんを交互に見て、またあの笑顔でウィンクをしたと思ったら、
「詳しいことは本人に聞いてね。勝利、頑張れ」
とだけ残してえー！と文句を呟くマリウスさんの首根っこを掴んで退散。そして残ったのは私達を取り巻くなんとも言えない空気。
どうしよう…と目線が合わないように逸らしていれば隣の気配が動く。
何かを漁る音の後、俯いていた私の目の前に差し出されたそれに思わず声が上がる。
『…！これ、インディーズに出した私達の初めてのアルバム…！』
所々傷がついているがとても大切にしてくれているのだろう、状態はとても良かった。
パッと上げた私の瞳には真っ直ぐと私を見つめる彼。その表情にどきりとした私から視線を逸らさず、どこか緊張した面持ちでゆっくりと言葉にした。
「僕、Aさんのバンドのファンなんです」
………私は多分相当間抜けな顔をしていたと思う。頭の上にはてなマークが飛び交う中、佐藤さんは続ける。
「実は今回の話、僕が言い出したんです…半分冗談で言ったからまさか通るなんて思ってなかったんです。
だから緊張してしまって、僕緊張すると目付きが悪くなるのでそれでAさんに迷惑かけてると聞いて…すみません」
深々と頭下げた動作でハッと宇宙に飛んでいた意識が戻ってきて、私も慌てて頭を下げた。
『そんな！こちらこそご迷惑かけて申し訳ありません！しかも私達なんかを応援して下さってありがとうございます』
「…迷惑じゃないですか？」
『え？』
「その、仕事で公私混同するのは嫌そうだったので」
初めての顔合わせでそんなことを言った記憶を引っ張りだしあぁ、だからあんなに話しにくそうだったのか、と合点がいった。
憧れの好きな人を目の前にしたら緊張するのは私もある。遠い存在のように感じていた距離感が親近感で少し縮まった気がした。
『あれは皆様に迷惑かけないように話しただけで言葉の綾のようなもので、全然大丈夫です。むしろ嬉しいです』
「…良かった」
安心したように綻んだその笑顔はまるで寒い冬を乗り越えて芽吹いた花のようで、そのギャップのような落差に不覚にもときめいてしまった。
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カノープス - にこさん» にこさんありがとうございます！頑張っていこうと思いますのでのんびり読んでくださると嬉しいです…！ (2021年5月7日 19時) (
レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！すごくこれからの展開が楽しみです！応援してます！！ (2021年5月4日 0時) (レス) id: fd9c2932e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カノープス | 作成日時：2021年4月7日 21時
