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オレンジの街灯が後ろに流れていくのを見つめることしか出来ない。この空間、どうすればいいのか分からずそうするしかない。
『あの…本当にすみません…お手数かけてしまって』
「いえいえ。確かに通り道だったし危ないからこの方がいいですよ」
目線は変えないまま愛想の良い声で返答してくれる菊池さん。そのハンドルさばきは慣れていた。
あれから事情を話した中島さんに快く承諾したのはまさかすぎて驚いたけどそれ以上に驚いたのが佐藤さんが大きな声を出して帰る間際までこちらから視線を離さなかったことだった。
なんだろう…また気に触ることしたかな…と不安そうにしていたのが伝わったのか、菊池さんが口を開く。
「あの、なんか気になることとありますか？」
『え？』
「いや、こっちからオファー出すのって中々なくて。しかもAさんとは初めてなので何かやりにくいこととかあったら教えて頂けると今後円滑に進むかなと思って」
ちらりとこちらに向けた視線は仕事モードなんだけど少し緩やかなせいか、或いは彼の醸し出す優しくて頼りがいのある雰囲気のせいなのか、ぽろりと零れた言葉は、
『………佐藤さんって、私のこと嫌いだったりしますか？』
ずっと心に重くのし掛かっていたこと。少しだけ軽くなったと同時にそれまで安定していた車体がぐらりと揺れた。
今度は私が視線をやればハンドルは握ったまま、けれど片肘をついて口の前に手のひらを置いた菊池さんは心なしか動揺していた。
言葉が足りなかったと思ったので慌ててここ最近思っていたことを話せば納得したみたいだった。
「あー…多分緊張してるんだと思います。勝利、人見知りなんで」
『じゃあ嫌われてる訳じゃないんですね？良かった…』
「嫌われてるというか、むしろ」
ほっと胸を撫で下ろした私に何か付け加えようとしたみたいだが、ぐるりと目を動かしてから口をつぐんだ。
「まぁ俺から言ったら野暮な話だしな」
『？なんの話ですか？』
「こっちの話です。でも良かったらAさんから話し掛けてみてくれませんか？きっと、いやめちゃめちゃ喜びますよ」
そう言って笑った菊池さんの表情は柔らかくて本当に皆さんのことが好きなんだなと感じた。
最寄り駅まででいいと言ったのに結局家の前まで送ってくれたし佐藤さんと弾みそうな話題を何個か教えて貰ったし、本当にこの人は面倒見がいいのかもしれないなと遠ざかるライトを見送りながら思った。
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カノープス - にこさん» にこさんありがとうございます！頑張っていこうと思いますのでのんびり読んでくださると嬉しいです…！ (2021年5月7日 19時) (
レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！すごくこれからの展開が楽しみです！応援してます！！ (2021年5月4日 0時) (レス) id: fd9c2932e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カノープス | 作成日時：2021年4月7日 21時
