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「そういえばダブルアンコールで歌われてた曲って俺聞いたことなかったんですけど…あれってもしかして昔の曲とかですか？」
『そうなんですよ。私達が初めて出したアルバム…インディーズの時のなんですけど、体に染み付いてて打ち合わせなしでもいけるので丁度いいかなと思って』
思い出した、と言いたげにそんなことを問い掛けてきた風磨さんに頷けば店員さんがすぐ作って持ってきてくれた。
白濁しているようで光に透かすと少し黄色がかったような色をしていて、一口飲んでみれば柑橘系なのか爽やかで甘い口当たりがなんとも美味。
おお、これ美味しい。
「………なんか悔しいですね」
『？なんでですか？』
「まぁ色々ありますけど、もっとAさん達のこと早く知ってたかったなってのが一番です」
私が一人で美味しさに感動していたら少し沈んだ声が聞こえてゆらゆら見つめていた水面から目をあげる。
視線を落とし飲み口の所を指で持ち溶け残った氷を弄ぶようにグラスを揺らすその姿は扇情的だった。
『早いとか遅いとかないですよ！私は好きって言ってくれるだけで嬉しいですしその好きがずっと続いて私達と一緒に歩んでくれたら、私は幸せ者です』
慌てて言葉にはしたけど、アルコールでふにゃふにゃになった頭を頑張って動かしたから変なこと言った気がするぞ。
恥ずかしさを誤魔化すようにまた手元のお酒を口に含めばふわりと香る柑橘系と、それとは違う甘ったるい香り。
「それってバンドの話ですか？それともAさんの話？」
いきなりぐっと顔を近付けてきた風磨さんのきらきらと光る金色と瞳の奥にちらつく熱くて煮えたぎる感情があまりにも妖艶で、目に毒過ぎる。
距離を取ろうにもその瞳が離してくれなくて、紡がれた言葉が甘ったるく纏わり付く。
「想いを伝え続ければ、Aさんは隣で笑ってくれるんですか？」
グラスを持っている方の手の甲を彼の大きな手のひらが撫で回す。ぞわりと走った震えと結露で湿った手のひらのせいでグラスが滑り落ちる…前に風磨さんが奪い取る。
「………なんて、分かってますよ。Aさんがあまりにも優しいんでちょっと調子に乗りました。
でも、あまり男に隙見せちゃ駄目ですよ？こんな飲みやすくて強い酒飲まされて、何されるか分かったもんじゃない」
さっきまで私の手を撫でていた大きな手のひらが今度は私の頬に擦り寄ってくる。吸い付く水滴は冷たいはずなのに沸騰した水のように熱かった。
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カノープス - にこさん» にこさんありがとうございます！頑張っていこうと思いますのでのんびり読んでくださると嬉しいです…！ (2021年5月7日 19時) (
レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！すごくこれからの展開が楽しみです！応援してます！！ (2021年5月4日 0時) (レス) id: fd9c2932e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カノープス | 作成日時：2021年4月7日 21時
