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暗転したステージ。いつもならここで終演を告げるアナウンスが流れ場内が明るくなるんだけど、今日は待てども待てども流れない。
それどころか暗転したままのステージ、前の方にいるお客さんの舞台袖を見つめる視線、そしてまさかと期待するフロア全体の空気感。
「なぁ、これってもしかしてさ…」
「…うん、多分」
風磨くんと声を潜めてお互いの考えていることを答え合わせしようとした刹那、眩い光に再度照らされ登場してきた彼らに会場のボルテージが一気に上がる。
“いやー、もう終わるつもりだったんですがAがやりたい！って言い出したんで出てきました！”
『その通りだけど私から言わせてよ！』
慌てて出てきた彼女が恥ずかしそうにマイクに向かって叫ぶから客席から可愛い！なんて野次が飛ぶ。
…うん、頬を上気させいじけたように前髪を撫でた彼女は確かにかわいいなと思った。
ベースを背負った彼女が一瞬だけ視線をあげる。フロアを見渡しただけなのに、その瞳が俺だけに向けられてるような錯覚に陥り心臓が忙しなく動き出した。
“出てきたはいいがなにやるか決めてなかったな”
『ほんとだね』
それぞれチューニングをしながらどうしようかと相談し始めた彼らだったが、じゃあ！と手を掲げた彼女に視線を弦やスティックから上げた。
『私やりたい曲あるんだけどそれでもいい？』
“それ俺ら今から咄嗟に出来るやつ？”
『大丈夫だいじょーぶ、だって…』
とドラム前に集合した彼らは話し合いを始めた。ほんの数十秒、よし！と叫び定位置に戻ったのを確認してセンターの彼女は口を開く。
『それではこの曲が本当の本当に最後です。この曲は私達の大切な大切な曲であり、原点です。
だから、この想いが届いたら、嬉しいです』
照明に照らされた瞳が真っ直ぐと二階にいる俺を捉えて、きらりと光った。
時が止まった。それは感覚ではなく、確実に止まっていた。そして、俺の心臓も。
ほんの数秒だと思う。けれど、確実に絡み合った視線に悪戯っ子を覗かせた笑みを浮かべた彼女に時と思いは加速した。
『ワンツー！』
カウントを咆哮し鳴り響いたメロディーと歌声、その曲にフロアは歓喜の渦と化す。
………あぁ、だめだ。こんなの想いが溢れて、
「…好き」
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カノープス - にこさん» にこさんありがとうございます！頑張っていこうと思いますのでのんびり読んでくださると嬉しいです…！ (2021年5月7日 19時) (
レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！すごくこれからの展開が楽しみです！応援してます！！ (2021年5月4日 0時) (レス) id: fd9c2932e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カノープス | 作成日時：2021年4月7日 21時
