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『あ、この辺で平気です。裏から入りたいので』
「わかりました」
あの後は何事もなく普通に美味しい食事会となり、今は私の仕事場まで送ってくれている。
ちなみにお代は全部彼持ち。払おうとしたのだけど「俺の前では財布出さなくていいです」だなんて男気溢れることを言われてしまいときめきで死ぬかと思った。
流石にラジオ局まで送って貰う訳にはいかないので近くで降ろして貰うことに。
緩やかに路肩についた車体はハザードランプを点灯させ一時停止した。
荷物を確認して、菊池さんに向き直る。せめてお礼はしっかり言わないと。
『今日は本当にありがとうございました…美味しかったですし楽しかったです』
「本当ですか？」
『？はい。幸せな気持ちでいっぱいです、今』
「…良かった」
鬱陶しかった雨も上がり頭痛はしないし美味しいものを沢山食べた体は気力で満たされている。満たされすぎてこの後のラジオで眠たくなりそうなくらい。
力強く私が何度も頷けば安堵が込められた言葉と共に大きく息を吐く。その意味が理解できなくて首を傾げれば菊池さんはハンドルに凭れかかりながら話し出す。
「いや、ちょっと強引に連れてきちゃったんでAさん気を悪くしてないかなーとかまた無理してるんじゃないかなーとか不安だったんですけど、その笑顔見たら安心しました」
こちらに顔を向けたその光景はいつの日かの別の人を思い起こす。けれどもそれよりも妖艶で蕩けるような笑みを浮かべる彼に心拍数は格段に上がり、
「またこうやって会ってくれます？ご飯食べたり買い物行ったりしましょ」
『…私で良ければ』
「Aさんだからいいんです。Aさんのこともっと知りたいし俺のことも知って欲しいんです」
そう懇願する甘い低い声に抗うことなんて出来ず頷けば無邪気に笑う。
降りてもう一度お辞儀をして歩き出した私がラジオ局の敷地内に入ることを確認した車はゆっくり発進して夜の暗闇に消えていった。
“あれ？Aさんなんか顔赤くない？”
『き、気のせいです！！！』
打ち合わせの開口一発目にラジオのプロデューサーさんにそんなことを言われたから被せるように否定する。
あれはただの好意、勘違いしては駄目だと頬を叩くもその頬がやっぱり熱いので誤魔化すように強く叩いた。
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カノープス - にこさん» にこさんありがとうございます！頑張っていこうと思いますのでのんびり読んでくださると嬉しいです…！ (2021年5月7日 19時) (
レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！すごくこれからの展開が楽しみです！応援してます！！ (2021年5月4日 0時) (レス) id: fd9c2932e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カノープス | 作成日時：2021年4月7日 21時
