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“はいよ。メンテナンスしっかりしておいたからよ”
『いつもありがとうございます』
今日はオフ。ということで馴染みの楽器屋さんにお願いしていた相棒の引き取りに来た。
ケースから開けてみるとボディはピカピカ。弦もしっかり張られているし非の打ち所がない。
“ちょっと劣化してたからもう少し管理気を付けた方がいいな”
『やっぱりそうでしたか…気を付けます…』
楽器街の少し離れた路地裏に佇む小さな音楽ハウス。知り合いのバンドマンに紹介して貰ってからずっとお世話になっている。
音確認するかい？と頷きかけた頭はふいに聞こえてきたエレキギターの軽快な音に止まる。
そちらの方に目をやるとどうやら試し弾きをしようとしている人がいた。
“ああ、あのお客さん最近よく来るんだよ。ギター欲しいみたいだけど決めかねてるんだってさ”
このお店は基本的に自力で見つけて来るものではないし、そうなるとお客さんも私みたいな紹介とかそういうのに限られてくる。だから見かけないその姿が珍しくじっと見つめる。
………ん？椅子に座る細身で少し猫背ぎみに丸まるその後ろ姿、よくよく見るとそれには見覚えがあった。
『佐藤さん？』
「え、え！？Aさん！？」
音の隙間をかいくぐって覗き込むように話しかければ、心底驚いた表情で椅子から転げ落ちそうになる。
知り合いかい？と私のメンテナンスをしてくれた店員さんがこちらに向かってきながら問い掛けてくる。
『ええっと…仕事でちょっと』
“へぇ！なるほどなるほど！もしかして君が言ってたのはAちゃんのことか！”
本人は軽く変装してるし店員さんは気付いてなさそうだから私から言うのは違う気がして、曖昧に濁せば合点がいった！と手を叩いた。
どういうことですか？と首を傾げる私と隣で慌て出す彼に歯を見せて笑う。
“このお客さん、初めての時一人でふらっと入ってきたからどうしてここ見つけたのか聞いたのよ。
そしたら「とある人に勧めて貰った」って話しててよ。
そっかーそれはAちゃんか！”
確かに前ここのお店の名前は出したなぁ…と思い出して、何か言いたげな店員さんに意識を戻す。
「あの、言わないでくださいね！？恥ずかしいんで」
“分かりましたよ。俺は言ってもいいとは思いますけどね”
口封じする彼の言葉にけらけら愉快に笑うけど、何のことがさっぱりな私は曖昧に笑い返すしかなかった。
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カノープス - にこさん» にこさんありがとうございます！頑張っていこうと思いますのでのんびり読んでくださると嬉しいです…！ (2021年5月7日 19時) (
レス) id: e30a93ed77 (このIDを非表示/違反報告)
にこ(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます！すごくこれからの展開が楽しみです！応援してます！！ (2021年5月4日 0時) (レス) id: fd9c2932e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カノープス | 作成日時：2021年4月7日 21時
