Music44 -side Mikaze- ページ45
それは、ボクが撮影を手早く終わらせて、楽屋に忘れ物を取りに行こうとした時のことだった。
通路の先に見えたのは、他でもないカミュ。
でも、少しだけ雰囲気がいつもと違った。
普段ほとんど乱れることのない彼の心拍数が少しだが増加していたこと、そして何より、
「カミュ……その手に持ってる物騒なものは何なの?」
ボクが今まで見たことがないくらい、彼が不機嫌そうに見えたからだ。
「…貴様には関係ない」
「何か、あったんでしょ。眉間の皺がいつもより1本多いよ」
魔法の杖…たまに持ってるのは見たことがあったけど、明らかに様子がおかしい。
カミュの周囲だけ極端に気温が低下しているのもまた然りだ。
10℃以下…今にも服に霜が降りてきそうな彼を、問い詰める。
「正直に言って。さっきまで楽屋で何をしてたの」
「……別に」
「ダウト」
カミュの言葉を遮って、声を荒らげるボク。
違う、ボクが聞きたいのはそんなくだらない言い訳じゃない。
嘘なんか今は要らない。
それは、いくらカミュでも譲れないものがあるからだ。
「その程度の嘘でボクを欺けると思ったら、カミュのボクに対する研究不足。恍けても無駄だよ。そんなにボクの言うことが理解できないんだったら、はっきり明言してあげる」
ボクは衝動的にカミュに急接近する。
その距離、僅か数センチ。
彼の高い鼻先とボクの鼻先が触れ合いそうなくらい、息と息が混ざり合いそうなくらい、近くで。
脅迫めいたことを呟いた。
「ボクのAに、何したの」
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作者名:蒼乃 | 作成日時:2020年6月10日 21時