Music42 ページ43
どういう経緯で俺がここに来たのか、今、音羽の意識は存在していなくて、“俺”という「意識」が音羽を動かしているということ、俺がカミュの名前を知っている理由……
俺はカミュに全てを話した。
….もちろん、ロボットであることは除いて。
「ふっ……馬鹿め、俺がそのような奇っ怪な戯言を信用すると思うか」
「信じるか信じないかはカミュに任せる。でも、これが真実だ。俺にはそれしか言えない」
「言い逃れをしたいなら、もう少しまともな嘘を吐くんだな」
「だったらどうする。俺を氷漬けにして殺すか？“クリスザード”」
「ッ………貴様……あくまでも愚民の分際でこの俺を愚弄するか！」
俺は半ばヤケになっていた。
覚悟が出来たからこその、この大口だった。
カミュは立ち上がって激昂し、その端正な顔を怒りに歪める。
そんな彼を見ていると、勝手に口から苦い笑みが零れた。
これはどちらかといえば自身に対する自嘲の笑みだったのだが、それを見たカミュは遂にブチ切れたのか、手元に青いジュエルが目を引くステッキを召喚して俺の目の前に突きつけてくる。
「……良いだろう。ならば、望み通り息の根を止めてやる。異世界からの転生者とやらめ！」
やはり、怖いという感情は湧いてこなかった。
こんな命の危機に直面しても、心拍数は一向に上がる気配はない。
つくづく哀しい“ヒト”だよ音羽、お前は。
「俺は、好きでここに飛ばされてきた訳じゃない。向こうでもこっちでも、俺は独りだ。カミュの国についてどうこう言う筋合いは俺には無いし、もとより口出しする気もない。国の情勢だの何だのには興味ないしな」
「知っていることを悪用するつもりは全くない。その証拠に、俺の一番の秘密を今お前に教えた。それでイーブンだろ？」
「………！」
「カミュ、聞き分けのいいお前なら分かるはずだ。俺をここで始末して、意味があるかどうかくらいはな」
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作者名：蒼乃 | 作成日時：2020年6月10日 21時
