Music41 ページ42
若干語気を荒げて俺に問いかけるカミュ。
有無を言わせない威圧を感じても、気持ちに反して心は冷静そのものだった。
ロボット…だからかな。
カミュが問うているのは紛れもない俺のはず。
なのに、いつの間に第三者目線というか…何故か俯瞰的になってこの場を見ている。
『感情がほとんど無い』
美風の言ったセリフが、今更ながら胸を抉った。
だが、作られた偽物の拍動は、決して乱れることなく俺の胸板を叩いている。
俺は前世、感情が無ければこんな辛い思いはしなくていいのにと何度も思ったことがある。
でも、転生して、音羽Aになって…初めて分かった。
感情が無い、とは……“ある”こと以上に辛くて、こんなにも虚しい。
その『辛い』『虚しい』の感情ですら、じきに“要らない感情”として脳に搭載されてるAIに切り捨てられるんだろう。
そういう運命だと分かっていながらも、音羽は歌い続ける。
全ては、『アイドルになる』という自分の授かった使命を全うするため……
__でもそれって、本当に意味があるのか?
心から歌う曲でなければ、人の心を打つことはできない。
感情は、アイドルにとって不可欠な要素なんじゃないのかよ。
音羽は言ってた。
『たすけて』って。
そんな奴に無理やり歌わせて、何になるって言うんだ。
胸糞悪い。ふざけるな。
音羽の気持ちが…お前らに分かるか。
俺は俺のやり方で、アイドルをやってやる。
この胸の痛みを、機械なんかに削除させてたまるか。
「………分かった、全部話す。俺がこれから話すことは、全て事実だ。苦し紛れの言い訳じゃない。これだけは先に弁明しておく」
真っ直ぐにカミュを見据える俺。
俺の一番の秘密…1人くらいとは共有しておいた方が良いだろう。
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作者名:蒼乃 | 作成日時:2020年6月10日 21時