Music40 ページ41
ごくり、と唾を飲む音が自分から聞こえた。
この受け答えで、俺の生死が左右される。(かもしれない)
カミュは一呼吸置いて、口を開いた。
「1つ。……貴様、先程は何故俺を“
「！！」
空気が震える。
その一言だけで、カミュがどれだけ真剣にこの話をしているのかがひしひしと伝わってくる。
『何故』。
そう言われても、答えは「知ってたから」としか言えない。
でも、この状況でこんな答え方をするのは無粋極まりない。
考えるうちにも、時間は刻々と過ぎていく。
静寂が辛くて何か言おうとするのだが、その氷のように冷たい瞳に射抜かれると、また口を噤んでしまう。
「Cryszard……幼名は、とうの昔に捨てた。知っているのだとすれば、親族と女王陛下、一部の国の人間くらいだ。…少なくとも、こちらに来てから出会ったお前が知っているなど、絶対に有り得ぬ」
＿＿＿すみません、ちょっと話についていけないんですが。
クリスザードって………そんな重要で国家機密レベルの名前だったの！？
いや、まずそうだと知ってたら、俺もその名前でカミュを呼んだりしなかったんですけど。
学習不足……か。
もっと妹に聞いておけばよかった。
とてつもなく面倒なことになった。
適当な答えであしらえる場じゃないぞ、これ。
もしこれで俺が下手な発言をしたら、きっとカミュの国へのスパイか何かの容疑を掛けられてしまうかもしれない。
最悪の場合、やっぱりここで俺は第2の人生を終えることになる。
どうする、俺。
「もう一度訊く。貴様は何故、“知り得る筈のない”俺のもう1つの名を知っている？
…返答次第では、命の保証は無いぞ。音羽A」
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作者名：蒼乃 | 作成日時：2020年6月10日 21時
