第三十話「決意」 ページ31
あの一夜で、お酌をするのが怖くなった。それと同時に、男の人も怖くなった。初めて欲にまみれた男の人を見たから。全員が全員そうでないとは分かっているけれど、あの人の顔が思い浮かんで拒絶を起こす。吐き気さえ覚えた。
「…あの人がお見えになってるわ。あなたに逢いたいって」
私はその言葉に初めて姐さんの方を向いた。姐さんは心配そうに私を見つめていた。姐さんは、あの人の名前を口にした。宇髄天元。宇髄さんが、来てくれたのだ。あれから時は過ぎた。それでも宇髄さんは私のことを忘れずに、逢いにきてくれたのだ。
「… ごめんなさい。逢えない」
でも、今宇髄さんを見てしまったら拒絶してしまうだろう。こんな弱い姿、誰にも見せたくないの。宇髄さんにだけは絶対に見られたくない。私は、強くなければいけないのだから。錆兎を守り、その後はこのお店を守らなくては。私がこの世界に生まれた意味を見出すために。
「…そう。私が断っておくわ」
「…ごめんなさい、姐さん」
パタリと襖が閉じられた。私はその後、窓際へ座ってソッと窓から外の様子を見た。姐さんが店から出れば、壁に寄りかかっていた宇髄さんが笑顔になる。だけれど姐さんが逢えない事を伝えると、宇髄さんはどこか残念そうにして、店から離れていった。宇髄さんがそういう人ではないのはわかっているのだけれど、身体は覚えている。あの、男の恐怖を。すると、ポツリポツリと雨が降り始めた。雨は次第に強くなり窓を打ち付けた。花街を行く人は傘を差し、街は花が咲いたかのように鮮やかだった。
「…あの人の伝言。あの柳の木の下で貴方を待ってるって」
いつのまにかいた姐さん。私はそれを聞いて目を見開いた。柳の木の下。私はあそこを知っている。人通りが少なく、ポツリと立っている柳。宇髄さんには逢えない事を伝えたはずなのに。どうして、私を待ってくれるの?
「いつでもいいんですって。貴方を待ち続けるからと」
私はそれを聞いて目を見開いた。この雨の中、宇髄さんは私のことを待っているの…?私が、逢えないと言っても貴方は私を待ってくれるの?
原作と関わってはいけない。関わって仕舞えば、大切な人を失う。この身体じゃもう何も守れないから。でも望んでいいの?その先を、私は掴んでいいの?
私はフラリと立ち上がる。姐さんは微笑んで耳打ちをしてくれる。傘は、二つ持ってていいからと。私はその言葉に急いで部屋を出た。玄関へ行くと乱暴に下駄を履いて、店を飛び出した。
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❤︎ - 面白かったです〜!!!最後には少しうるっときました…笑もう3年も更新されていない事に驚きです。続きが気になる〜〜!!何年でも待つのでまた更新してくれたら私含め読者達ありがたいです!待ってますね。 (8月24日 21時) (レス) @page41 id: f6dfc22ed3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ - めっちゃ面白いです!!!更新待ってます!!!!!!!! (2022年3月22日 22時) (レス) @page41 id: 4673827fe0 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 続き!続きはどこ?!ねぇ?!((やかましい (2022年2月26日 21時) (レス) @page41 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
とうめい - 終わっちゃった〜…続きが気になります…更新待ってます!! (2021年10月3日 12時) (レス) @page41 id: 4fdb593f0d (このIDを非表示/違反報告)
りあむ(プロフ) - 終わり!?更新待ってます、、、 (2021年10月2日 20時) (レス) @page41 id: 5dcfb8d8c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜餅 | 作成日時:2019年11月17日 20時