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熱でぼんやりとした中で

かすかに聞こえる

低く、心地いい聞き慣れた声

額をなでる大きくて冷たい手

誰……?

家には…誰もいないはずなのに


両親と年の離れた兄は、家にいる時間が少なくて

俺は昔から一人の時間が多かった

でも寂しいと思ったことは無い

『翔、遊びに行こう!』

なぜなら、いつも潤が遊んでくれていたからだ

それに、自分が家族に愛されていることもちゃんとわかっていたから

全然寂しくなかった。


……こんなにひどい風邪はいつぶりだろう

この家に来て、初めて風邪をひいた日

普段家にいない両親が付きっきりで看病してくれて

お父さんが変えてくれた氷枕とか

お母さんが作ってくれたお粥とか

そんなのは初めてだったから、少し嬉しくて

風邪をひくのも悪くない、と

思ってしまった。


まぁ今は子供じゃないから

全然一人でいいんだけど

さっきの手は誰だったんだろう

まだ、いるのかな

夢……だったのかも

うっすらと目を開けると

ベッドにもたれかかっている

見慣れた背中があった

「お、やっと起きた。どう?具合は」

俺の気配に気づいた潤が覗き込んでくる

「え、なんで…潤がここに居るの?」

「決まってんだろ、看病だよ。お粥食べれるか?」

「……食べたくない」

「だめ、食べなさい」

ベッドの上にお盆が乗せられる

いや、なんで聞いたんだよ

「熱は……まだあるな」

そっと俺の頬に手をやって、潤は熱を確かめる

「大人しく食ってろよ。氷変えてくるから」

なんで弱ってる時に限って

そんなに優しいんだよ

「……じゅん…」

ぽたぽたと知らぬ間に涙が零れていく

「え!?し、翔?どうした、まだ具合悪い?そんなに辛い?」

「……俺が寝るまでそばにいて?どこもいかないで…」

「……わかったよ。お粥は後にしよう、氷も変えに行かないから。ほら布団の中入って」

「ん……」

布団の中に入ると案の定、眠気が襲ってくる

瞼が重たくなって、潤の顔が見えない


でもその後覚えてるのは、

お母さんが帰ってくるまで

ずっと潤が一緒にいてくれたってこと

風邪をひくのも悪くないと

また、思ってしまった……





独り占めか……悪くねぇかも

こいつ相当弱ってたな

俺は今日翔に、クリスマスプレゼントを届けに来ただけのはずだったんだけどな

「…起きたらちゃんと気づけよ……?」

翔の細い手首に

チャームのブレスレットを付けておく


───これが中学最後のクリスマスの話。


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設定タグ:S受け , バンビズ , 潤翔   
作品ジャンル:タレント
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作者名:カフネ | 作成日時:2019年2月16日 13時

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