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「ありがとう…でもホントに大丈夫だから。むしろ潤が来てたことに驚いたよ」
翔が眉を下げて困ったように言う
……大丈夫だって?
遠目で見ても一発で分かるくらい
固まってたくせに
「クラスのみんなと回るのは楽しかったけど、潤にもいて欲しかったから、今すっげー嬉しい」
翔はそう言うと歯を見せて笑った。
何強がってんだよ、とイライラしながらも
その言葉が嬉しくて仕方がない
翔のこととなると単純だよな、ほんと……
翔はそこまでさっきのことを気にしていないと思っていたけれど───
通行人が翔のすぐ後ろを通ったとき
ビクッと肩を強ばらせて俺の胸にしがみついてきた
「…大丈夫って言いませんでしたっけ」
「え、えっと……」
やっぱり無理してたか
「あはは、ごめん!!ちょっと人多いから押されちゃって……」
そういえばあのクラスメイトの男
こんな風に翔の肩を抱きとめていやがったな───
はいはい、どうせまた嫉妬ですよ。
焦って俺から離れようとする翔を
もう一度引き戻して
今度は強く上から抱きしめる
「えー……潤?」
周りから歓声があがって
色とりどりに光り
心臓に響くぐらいの大きな音が轟いても
俺は翔を抱きしめたままだった。
こんなにも大切に思っているのに
なんで伝わらないんだろう
「もうすこし…このままがいい」
いや、違うな───
俺が怖いだけなんだ
幼馴染という関係を壊すことになるのが
恐ろしくてしかたない
「えっと…みんな向こうで待ってるから、行こう?」
「いいの?俺と一緒に行くとまた何か言われるぞ?」
「…確かにこれ以上誤解されるのは嫌だけど……それでも一緒にいたいって言ったじゃん」
翔の俺の腕を握る手に力が籠る
「それに…周りの人達がなんと言おうと、俺たちが友達なのに変わりはないから」
友達、か───
『失うてから後悔しても遅いで』
今更のように蘇るあの男の言葉。
この宝物はちょっと厄介だ
手に取ろうとしたら壊れるから
失うのが怖くて
隠して見守ることしかできない
すっと腕の中から翔を解放すれば
頬を染めて恥ずかしそうにしている翔の顔。
「翔…顔真っ赤だけど」
「う、うるせえよ!だってお前が──!」
「俺が何?俺がお前のこと抱きしめたあと」
俺ばっかり悩んでずるいよ
「キスでもするかと思ったか?」
ちょっとはお前も動揺しろよ
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作者名:カフネ | 作成日時:2019年2月16日 13時