18 夏祭り(4) ページ34
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小さな子供たちが
楽しそうに人混みの間を走り抜けていくのを見て
少し前までは自分たちもあんな感じだったなと
今となりに潤がいないことを
寂しく感じた
18 夏祭り(4)
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ひ、人多すぎやしませんか!?
俺は人の波にもみくちゃにされていた。
ちょっとお土産買おうとして抜け出してきたんだけど
これは戻れる気がしないな…
うわ、これ以上押さないで───
と嘆いていた時
太ももの裏に妙な感触があって
耳元に生暖かい息遣いを感じて
ぞわり、と肌がざわめき立つ
硬い男の指がすぅっと腰をなぞって
そのまま俺の尻に手を伸ばしてきた
…………は?なにこれ
俺が触られてるの……?
俺としたことが……このくらいで体が動かない
久しぶりだ、この感じは
怒りが押し寄せるのに怖くて声が出ない
畜生、ふざけんな
誰か───
切にそう願った時
「───っ、翔!」
誰よりも聞きなれたあいつの声がして
ふわりと紺色の浴衣が視界をおおって
信じられないくらい強い力で腕を引っ張られた。
後ろの変態オヤジが驚いたように
間抜けな声を出してひっくり返る
なんで、どうして潤が
そう思ったけれど
今信じれるのはこいつの背中しかなくて
俺ははるかにたくましい腕にしがみついていた。
。
。櫻井翔
。松本へのお土産にたこ焼きを買うつもりだった
俺は人混みなんてまるで無視して
翔の手を握ったままずんずんと進んでいく
どうしてここにいるんだろうとか
なんで浴衣着て楽しむ気満々なのかとか
聞きたいことはたくさんあるだろうけど
今はそれどころじゃなくて
しばらく無言で歩いてからくるりと振り返る
「潤、いつの間に来てた───」
「この馬鹿が!!」
どうしても一言翔に言ってやりたくて
「んだとコラァ、もっかい言ってみろ」
「後ろに変なやつ付いてたんだろ、なんで振り切らなかったんだよ!!」
「…混み合ってて動けなかったし、お土産買いたかったし……」
「お土産なんてどうでもいいだろ!!」
「良くねぇよ!お前の買うつもりだったんだよ!」
……え、そうなの?
「…それは悪かった!反省!」←ちょっと嬉しい
「素直だな、おい!!」
「でも……っ」
翔を握る手に力を込める
「…あれだけじゃ足りねぇよ。本当はあの場で半殺しにしてやりたかった」
また以前のように翔を苦しめたくなくて
最初から一緒に行ってやればよかったとか
そんな後悔ばかりだ
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作者名:カフネ | 作成日時:2019年2月16日 13時