02 引越し準備 ページ3
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02 引越し準備
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。櫻井兄弟 智と翔
。松本三兄弟 潤と霞と霈
。
「お前…本気でそれしか持つ気ねぇのかよ」
スーパーを後にして、家に向かう。
目の前にははだかのまま揺れているネギが一本。
翔が素手で握っている。
「だってお前ん家の食材じゃん」
「翔…てめぇ週五でうちで食ってるくせに」
翔は俺の数歩先を歩いている。
夕日が作る影が俺の前を行き来する。
さっきまでぼーっとしてたかと思えば
今は忘れたようにすたすた歩いて
「…お前ん家のもんなんだからお前が持つの」
勘違いかと思ったが、やっぱり今日は翔の様子がへんだ。
思いすごしではないらしい。
「…お前今日なんか変。どうしたんだよ本当に」
翔に追いついて振り向かせようとするけれど、
「別にどうもしてないよ。いつもと同じだから」
あいつは俺の手を振りほどいてさらに進んでいく。
何か嫌なことがあったり
考え込んでいる時
翔は俺と目を合わせようとしない
「翔。引っ越しても、連絡するから」
ぴたりと足が止まる。
「遊びにも行く。だから…そんなに寂しがるなよ」
振り向いた翔の顔は少し動揺しているようだった。
「何言って…俺が寂しがる?別に家が離れるだけで、そんな大したことでも」
「でも今までのように一緒にはいられないよ」
もう隣にはいないんだ
引っ越しくらいで騒ぐ必要はない──
だから二人とも何も言わずにいれたのに
「…人がせっかく、何でもないふりしてたのに」
「翔…泣いてんの?」
「離してよバカ」
「翔…」
俯いている翔の
柔らかい髪に手を置いて、そっと顔をあげようと…
バシッ
その瞬間、目の前が緑に染って
ツンとした匂いと、激痛。
やぁ、ネギじゃないか───何をする。
「離せって言ったろが、調子に乗るんじゃねえよ何するつもりだったんだよこのスケベ野郎が」
「何も出来ねぇよ!怖くてできるか!ネギで目を打つやつがどこにいるんだよ!」
やんややんや。
「──絶対!会いに来てよ!俺も行くから」
気付けば半泣きの翔が俺を見据えていて。
「ホントに…絶対っ」
ダメだ、俺も涙腺が崩壊して。
「お前俺のこと忘れんなよ…!俺が貸した二千円も!」
「お前もな!そのあと俺三千円貸したしそろそろ千円返してよ…!」
お互い抱きしめ合いながら泣いた。
当たり前のように一緒にいて
当たり前のように仲良くなった
俺たちは───
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作者名:カフネ | 作成日時:2019年2月16日 13時