【暗殺教室】放課後、月のカフェで５ (ページ10)

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「ま、まわり、結構人いると思うんだけども…？」

いきなり抱きしめられたりしたら、困る。色んな意味で困る。

「みんな似たようなことしてるし、へーきだって」
「そ、そういう問題かな…」

こういう時のかるまくんの声、なんか…なんか、いつもよりも甘く感じちゃってね。『困る』が倍増するんだよ…。

そう言われてみたらカップルが結構、多かった気もするけども。いや、やっぱりそういう問題じゃない気がするんだけどな…？かるまくんの胸に顔を押し付けて隠す。だって恥ずかしいんだもん…！

…ああ、でも、あったかいなぁ、かるまくん。

しばらくそのままの状態でいれば、流石の私も慣れる。心拍もだいぶ落ち着いた、気がする。

「ねえ、Aちゃん」

でも、顔を上げるのはちょっと無理かなーとか思ってたのに。名前を呼ばれたら反射的にかるまくんの方に顔を向けちゃうのが、悔しい。

顎を軽く持ち上げられて、かるまくんの顔が近づいてくる。
食べられちゃう。かるまくんに人肉食なんて特殊な嗜好はないと思うし、そんなはず、ないんだけども。そんな風に錯覚しちゃってぎゅっと目を瞑る。

くす、と笑う声が耳に届いて…次の瞬間、唇にちょっと冷たくて、柔らかいものが触れる。
今までのそれよりもほんの少しだけ、触れ合う時間が長かった気がするけども。やっぱり、触れるだけのやさしいもの。

ようやく離れてくれた彼に、恐る恐る目を開けたら、大好きな柔らかい朱鷺色は目の前にあって。
ぽかぽか熱い顔も、さっきの出来事も、何もかもぜんぶが恥ずかしくなってかるまくんの胸に顔を埋め直す。

「まだ普通のしかしてないけど」

普通のって何。『しか』って、何の話？

「恥ずかしいものは、恥ずかしいんですよー…」

私の髪を軽く弄りながら、照れすぎって笑うかるまくんの声に、小さく反論しておく。かるまくんのその余裕は…本当に、なんでなの？意味わかんない。中学生のくせに。今まで彼女いたことも、ないくせにー。

「イルミネーションは？もういいの？」
「見られなくしたの、誰だっけ…」

一向に顔を上げようとしない私に、ちょっと呆れたように声をかけてきた。かるまくんのせいだと思うんだけども。今私がすごーく恥ずかしいのも…あったかくて離れたくなくなっちゃうのもね。

「は？俺のせいにすんの？」

やっぱり呆れたみたいな声だけど、ちょっとだけ、笑ってる気がした。