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「Aちゃん、クリームついてる」
「んぇ〜？」
口の横にクリームをつけた間抜けな顔で、間の抜けた声を出すAちゃんはかなり面白い。面白い、と同時に可愛いとも思っちゃってるから、俺もAちゃんに甘すぎるんだろうな。
「ここ。…いや、逆だよ」
鏡写しになってわかりやすいように自分の口の右端を触ったのに、Aちゃんも右側を触るから意味なかった。最初からこうした方が早かったなって思いながらAちゃんの口元に手を伸ばす。
「ん…んん…。ありがとー…」
自分で取れたけども〜、って俺からそわそわと目を逸らしながらちょっと口を尖らせるAちゃんに笑っちゃいながら自分の指に付いたクリームを舐める。
「…あま」
「どしたのー。甘いのいっぱい食べたらしょっぱいの欲しくなった？」
「そういう話じゃない」
「そっかー？」
ケーキを食べて、駄弁って、ゲームして。Aちゃんはホントに良く笑うな。
「出かけるの、肉じゃが作ってからにする？」
「どっちでもいいけど」
「うん、じゃあつくっちゃおー」
出かけて疲れてたらやだし、あっためたらいつでも食べれるようにしとこ！と笑いながら立ち上がる。
料理の時は髪まとめてるから…それもヘンな感じの原因のひとつかな。まあ、バイトの時によく見てる髪型ではあるんだけど。
「じゃあ、はい！材料はこちらになりまーす」
調理台の上に並べた材料を両手で指す。料理番組でも始めたの？
「あはは、あらかじめ切っておいたものがこちらー、とかって言えたら楽だね〜」
かるまくんちのキッチン、広いから2人でも作業しやすいね。ニコニコしながらこっちを見上げてくる。何がそんなに楽しいんだか。
「ん！じゃあかるまくんは、皮むきお願いします！」
「はーい」
あれこれ手順を説明しながら料理を作るAちゃんは、なんか手慣れてる。
俺もまあ、それなりにここには立つけど俺の場合はインスタントとかの方が多いから。作ったとしても簡単なものだし。自分が食べられればそれでいいから、凝ったものはまず作らない。
玉ねぎ切ってしみるとかなんとかってわあわあ騒いだり、皮むきをしただけで褒めてきたりする隣のヒトも普段はいないから。…あー、マジですっげーヘンな感じ。
「…で、あとは煮込むだけかな。どう？1人でも作れそう？」
「んー、まあ多分」
「ふふふ。お料理はそれなりにできるようになったので、任せてくださいよー。またなんか、作りたいものあったら教えるよ」
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作者名：nano* | 作成日時：2022年3月8日 20時
