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「鍵持った。いってきまーす……さっむーい」
「…まあ、冬の夜だしね」
家を出てすぐ、雪までちらつくような寒さに思わずぶるっと体を震わせてお気に入りのマフラーで鼻までしっかりと隠しておく。こうしてれば顔の半分はあったかい。
今日は12月31日。大晦日。年越しまで、あと2時間くらい。
今年の年越しは、かるまくんと過ごすことに決めた。
「ん？」
「んー！」
『ん』だけで会話をしちゃうのも寒さのせいだ、たぶん絶対！知らんけど…。
声と一緒に差し出された手を握ったら、かるまくんのコートのポケットにふたつの手が収まる。
「ふふ、手だけはすごーくあったかいね」
年末詣に行って、神社で新しい年を迎えて。そのままふたりで初詣をしようかなーって。そんな年末年始はどうでしょって、かるまくんを誘ったら、二つ返事でオッケーがもらえたので！
「大掃除したー！うちも、お店も！」
「Aちゃん、苗字採用なんだ…」
ここ数日の出来事を適当に喋りながら歩く。
いつも通りの移動、なんだけど…なんでだろうね。大晦日って、なんだかちょっとだけいつもと違う気がしてそわそわしちゃうよね。
「おー、人、結構いるねー」
屋台もいくつか出てて、ちょっとしたお祭りみたい。晩ご飯、もう食べちゃったからたこ焼きとかは入らないけども…。あ、甘酒配ってる。甘酒はむかーしお母さんが飲んでるのほんのちょっとだけ舐めて、あんまりおいしくない！って思ってからずっと避けてるんだよね…。
「年末詣とか、初めて来たかも」
「そうなのー？私もまあ、毎年は来ないけども。神様に、1年間ありがとうございましたーって言うんだよ！」
「その辺はなんとなくわかるけど」
手を離してお参りをする。私自身は神様とかそんなにしっかり信じるタイプではないし…かるまくんも、あんまりそういうタイプには見えないけども。
今年は高校にアルバイトに、いろんな新しい環境に飛び込んで…うん、もしかしたら、きっかけは誰かがくれて…きっと、私が自分で掴み取った。そんなたくさんのご縁に感謝だなぁ。
「…な、なんで笑うの？」
「真剣にお参りしてるなと思って」
「え〜…」
お礼を終えて、目を開けて隣を見たら、なんか笑われた。
ちょっと解せないけども。
「かるまくん、なんかあったかい飲み物買っていい？さむい！雪、こんな降ってるなんて聞いてなーい」
「ココア？」
「冬はあったかいココアがいいよねー。かるまくんは？コーヒー？ココア？コーンスープ？」
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作者名：nano* | 作成日時：2022年3月8日 20時
