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「ぅ…」
私の朝は、呻き声から始まった。朝だよね？朝じゃないかな？なんか、すごい暗い。起き上がろうにも身動き取れないし…。
金縛りってやつ…？次に目を開けたら目の前におばけ、とか絶対いやだよ。
「…かるまくん…？」
覚悟を決めて目を開けて、気づく。これ、夜とか、天気が悪いからとか、おばけの仕業とか、そういう暗さじゃない。もっと、あったかいやつ。
懐かしいなぁ、ずっとちっちゃい頃に、透と一緒にお父さんとお母さんの間に寝てたの。朝起きたら大概、私はお母さんにぎゅってされてるんだよね。…そのときのあったかさと、おんなじ。
「…んん…」
どうやら、かるまくんの抱き枕にされたみたい？
どうしてこんな状況になったんだか、よくわかんないし…ちょっと、恥ずかしくもあるけど、あったかくてなんだか、すごーく幸せだ。
このままぬくぬくするのもいいけども…。
まだ寝てるらしいかるまくんを起こさないようにそーっと動く。布団をほんのちょっぴり捲って、顔を出した。
「…ふふふ」
みえた。かるまくんの、寝顔だぁ…。
いつものきりきりしててかっこいいかるまくんとはちょっと違って。ほんのすこしあどけなさの残る寝顔。なんか、かわいいね。寝てても、やっぱり綺麗な顔だなぁ。
「写真、撮るんだった…」
しばらく眺めて、なんだかものすごーく綺麗な寝顔に、ちょっとうらやましくなってきた頃。いつだか、そんなことを心に決めたんだったなーっていうのを、思い出した。スマホを枕元、ぎりぎり手の届く位置に置いておいてくれたかるまくんに感謝。
「やっぱり、きれいだね」
うん。写真写りも素晴らしくいいね。100点。
何枚か撮って、何事もなかったかのようにスマホを元の位置に戻しておく。
あの頃の世界のどこよりも、安全で、安心できる場所は、あの、お母さんの腕の中だった。今は…。
「ぅうっ…」
7時かぁ…今から2度寝しちゃったら、なんか、全然起きれなくなっちゃう予感がする。1回顔洗って目を覚ましてこようかな。
そんなわけで、かるまくんの腕から抜け出そうとして、本日2度目の呻き声を上げる羽目になった。
私が抜け出そうとしたのを察したみたいに、逃がさない、と言わんばかりに力が強くなった。布団から出るどころかむしろかるまくんのほうに引き寄せられた。脱出を許さない腕だ。なにこれ。え、寝てるんだよね…？
「…かるまくん、ちょっと、あの、お兄さん…？ちょーっとだけ苦しいですね？」
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作者名：nano* | 作成日時：2022年3月8日 20時
