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「…」
俺も…俺んちの風呂で呑気に鼻歌歌ってるAちゃんも、バカなのかもしれない。
確かに今日1日ずっと、Aちゃんが俺の横で笑ってくれてて…俺もちょっと離れ難くなったのは、否定はしないけどさ。…だからって、泊まりはどうなの。それをすんなり受け入れちゃうAちゃんは警戒心がないのか、俺を信用しすぎなのか…どっちもって気がする。
脳内で不純だなんだと楽しそうに騒ぎ立てるタコはウザかったから黙らせておいた。そういうつもりは、一切ない。ないけど…俺の精神力、明日まで持つかな。
「…ねーみて、だぼだぼー」
やっぱりバカみたいに呑気な声にはっとなる。ちょっと考え込みすぎてたかも。
「…」
所謂萌え袖状態の袖をふわふわ揺らしてかるまくんっておっきいねぇとかなんとか。
…Aちゃんって、そんなちっちゃいんだっけ…って、思ったことをそのまま口にしたら、Aちゃんは怒るんだろうな。
髪、びっしょびしょだし…風呂上がりって、無防備だな。なんか、色々ダメかも。
ドライヤーを取って来て、まくった袖から手を出したAちゃんと自分の手元を見比べてちょっと考える。
「ここ、あっち向きで座って」
「んー？」
素直に横向きにソファーに座って、ドライヤーはー？って俺の顔を見上げてくる。
「わ…！？」
「Aちゃん、髪長いね」
こんだけ長いと乾かすのも大変そうだな。触り方もあんまり粗いと絡まりそう。
綺麗な黒髪だし、つやつやしてて手触りもいい。
「かるまくん？え、ねえ？これ、なんか恥ずかしいんだけど！」
「もー、やめてくれないならかるまくんの髪は私が乾かしちゃうからね！？」
ドライヤーの音に負けないように気持ち大きめの声。そわそわと振り返ろうとする頭には、その度にそっと手を添えて前を向かせる。人の髪を乾かすのって初めてだけど…かなり悪くないな。
同じシャンプーを使ったから当然なんだけど、Aちゃんの髪から俺と同じにおいがする。…意識しすぎると変な気分になる。
「まだ？」
「もうちょい」
「まだぁ…？」
「どう？」
「…乾いてる、ありがとー。人に髪乾かしてもらうのなんて、何年ぶりだろ」
この変な感じは絶対かるまくんにも味わってもらうからね。
心に決めた、って顔で俺を風呂に送り出してくれるAちゃん。ドライヤー、俺に持たせておいてくれるなら乾かしてからリビング戻ってくるけど。
「まって！ドライヤー私が持っとく！」
「…」
「舌打ち聞こえてますから！」
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作者名：nano* | 作成日時：2022年3月8日 20時
