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「ぬ、多くね？おじさん」
烏間先生が動けない今、俺が行く以外に手はないとか。まあ、考えることは色々と理由はあったけど、指摘せずにはいられなかったっていうのが一番の理由だった。
こんな時、Aちゃんだったらもうちょっと波風の立たない指摘ができんのかなってちょっと思う。少なくともみんなみたいに怖くて指摘できないっていうのは多分ないだろうな。ピリついた不良中学生と相合傘できるくらいだし。怖がりでビビりのくせして変なとこで肝が据わってる。…いや、あの子はただ他人に優しすぎるだけかな。
「だが…お目当てがこのザマでは試す気も失せた」
…っと。Aちゃんのこと考えてる場合じゃなくなった。仲間を呼んで皆殺しにするとかって携帯を取り出す。俺たちに交渉の意思がないってこいつらのボスにバレんのは最悪の展開。考えるまでもなくわかる。
手近にあった植木の鉢の部分でおじさんの携帯を狙う。ついでに同じことをやって見せるために窓に叩き付けて、一緒に割ってやった。脳内の…こんな時でも常識的なAちゃんがちょっと渋い顔をしたような気がした。
「ねぇ、おじさんぬ。プロって意外とフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ」
危険な目には遭わないでって少し前に言われたけど、今はこうしなきゃ俺もみんなも危ないんだ。仕方ないでしょ。
「…いいだろう。試してやるぬ」
当たり前かもしれないけど、隙なんてない。ちょっとでも隙見せたらコッチがやられる。
振り上げた植木の木は凄まじい握力で簡単に握りつぶされる。
「柔い。もっと良い武器を探すべきだぬ」
「…必要ないね」
扱い慣れない得物なんてこんな手練れ相手には意味ないし、必要ない。
頭蓋骨を握り潰すほどの握力。一度掴まれたらゲームオーバー…そんなの、普通に考えたら無理ゲーだけど…。立場が逆なだけでいつもやってるんだよね、その無理ゲー。
相手の攻撃は全部、避けるか捌く。…避けられるけど、こっちから攻め込んだら掴まる…このままじゃ、いつかは限界が来る。
「攻撃しなくては永久にここを抜けられぬぞ」
一向に攻め込む気配のない俺に、怪訝そうな顔で一度動きを止めてくれる。
「どうかな〜？引きつけるだけ引きつけといて、その隙にみんながちょっとずつ抜けるってのもアリかと思って」
あくまで余裕な態度を心掛ける。余裕を見せられなきゃどんなブラフも意味ないし。
「安心しなよ。そんな狡いことは無しだ。今度はこっちから行くからさ」
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作者名：nano* | 作成日時：2021年9月14日 21時
