【暗殺教室】放課後、月のカフェで２ (ページ22)

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「お邪魔しまーす」
「手土産とかいいんだけど…。俺しかいないし、親もまだしばらく帰ってこないから。好きに寛いでいいよ」

そういう問題じゃないでしょ、と手作りだっていうクッキーを手渡してくれる彼女はなんていうか…どこまでも常識的だなと思う。彼氏と家で2人きりって事実よりも、礼儀とかそんなことばっか気にしてそうだ。…うん、なんか複雑。

「…かるまくん、これなに？」
「親が置いてったインド土産」
「へぇ…」
「俺の部屋でいい？」
「…ん」

Aちゃんの顔には『なんか変わってるなぁ…』って書いてある。それでも口にはしないあたり、やっぱり常識的な子なんだろうな。俺はもう慣れっこで、コレが普通なわけだけど。上の空って感じで返事をしながら、親の趣味全開な俺の家を物珍しそうにキョロキョロ見回すAちゃんは可愛いかもしれない。

「んっ？かるまくんのお部屋？」
「…なにをそんなわくわくしてんの」
「えへへ」
「言っとくけど、面白いモンないからね」

部屋の近くまで来たとこで、何やらわくわくし始めた。

「あのね、自分だけの部屋っていいなーって思うの」

透とはんぶんこだから、よくうるさいって怒られるんだよね、と笑った。弟さん、俺の1個下だっけ。その年の姉弟で、仕切りしかない部屋で…ってのもだいぶ珍しいでしょ。それでも上手くやれてるみたいだから仲は相当良いんだろう。

「わー…？思ったよりも普通だ。勉強して寝るとこ、ってかんじだね」

感じ、っていうか事実そうなんだよ。

「普通って褒めてんの？」
「もちろん。綺麗にしてるね」

自分の部屋に家族以外の人間を上げるのは初めてだからちょっと妙な感じはするけど、嫌な気はしない。この家に上がってずっとそわそわしてたAちゃんが初めて、ホッとしたように見えた。ヘンな置物とかも多いからリビングじゃ勉強に集中できないかもって思ったの、当たりだったかな。

「机、コレ使って」
「うん。ありがと～」
「飲み物取ってくる。麦茶でいい？」
「うん。あ、私も行く…？」
「いいって。Aちゃんは宿題やってなよ」
「…はぁーい」

俺がもてなす側に回るのが落ち着かないのか、そわそわしながらもトートバッグからペンケースを取り出し始めたのを見て一旦部屋を出た。

氷を入れたコップとピッチャーを持って部屋に戻る前に、なんとなく一度ゆっくり息を吐き出しておいた。