【暗殺教室】放課後、月のカフェで (ページ8)

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「おっ、Aちゃんいた」
「いらっしゃいませ～…あ。おかえり、かるまくん」
「…ん、ただいま」

ちょっとくすぐったそうにするから、変なのかなとも思ったけど…京都から無事に戻って来たんだから、おかえりであってるはず。

楽しかった？って聞いたら、まあまあかな、だって。素直じゃないなぁ。そんなにいい顔で『まあまあ』なんて言われたら、修学旅行とは関係ないはずの私も嬉しくなっちゃう。

「これ、お土産。それと、甘ったるいコーヒー、京都で飲みそびれちゃったからさ。Aちゃんが淹れてよ」
「んん～…」

甘ったるいコーヒーってなに？お砂糖たっぷり、みたいな？確かに先週あたりにコーヒーの免許皆伝の報告はしたけども。
そんなのメニューにはないんだけどなぁ…？でも、そんな顔でお願いされちゃうと叶えてあげたくなるから困るなぁ…。

「仕方ないな～。特別だからね。お代はこの八ッ橋で…他のお客さんには、秘密だよ？」

カウンターに向かう前に、八ッ橋を頂いておこう。彼の座る席の隣に腰掛けて、いただきますと告げて一つ食べる。何故かテーブルに肘をついてじっとこちらを見てくるから、嫌な予感がするんだけど…気のせい？抹茶風味の甘い八ッ橋、と…。

「ん…んんっ…！？」

ツン、と…なんで八ッ橋の中にわさび！？
お水の入ったコップをこちらにスライドさせながら爆笑するかるまくん…。

「も、もう！なにこれ！他の人にこんなのあげちゃだめだからね！？っていうか、甘ったるいコーヒーとやらももう淹れませんし！」
「ごめんごめん。こっちは普通のだから」

なんとか口の中の甘いんだか辛いんだかよくわからない物体を飲み込んで、お水を飲んで。ようやくわさびのツンとする痛みが去った。涙目でキレる私と、いたずらが成功してご満悦のかるまくん。
笑いながら謝られても説得力なんて皆無だからね？わかってる？

「……」

お口直しにとニッキ味の八ッ橋を出してくれた。こっちは餡が入ってないから変なものを入れようがない…はず。香りを確かめてから食べる。うん、ちゃんとおいしい。

「は～面白かった。Aちゃんってわさび食べれないヒト？」
「さっきの見たらわかるでしょ…？ほんとにだめ」

先ほどの醜態を見られてしまったら取り繕う余地もない。

「コーヒーもダメって言ってたし…Aちゃんって、子供舌だね」

けらけら笑う。その通りだから、はいはい、と受け流すほかない。もうこれ以上彼に弱点を知られないようにしよう。